設立趣旨

「認定特定非営利活動法人・綜合画像研究支援」の概要


本認定NPO法人は、生命科学の研究にたいする超微構造研究技術の提供と支援、研究方法論に関する専門的助言と研究成果の評価、高水準の技術者と研究者のネットワークづくり、その能力と経験の有機的な活用、それらの技術を継承する若手研究者・技術者の育成等により、わが国の科学技術の振興に寄与することを目的として活動しています。
21世紀の生命科学は、ゲノム情報に基盤を置き、細胞機能から、組織・器官の構成、更には個体レベルの生体機能を総体的に理解することを目指して広がりつつあります。そこではゲノム解析は勿論、生物体を構成する様々な生体機能分子の係わりについての解析が必要であり、それには生体構成要素を可視化する技術が重要となってきました。

さて、生命科学は「形態学」で始ったといっても過言ではないでしょう。それは個々の生物の形態の観察から始まり、その発生・成長などが研究対象となりました。次いで、個々の生物の機能と代謝を扱う「生理学」、生体の構成物質を調べる「生物化学」、またその機能を解明する「生化学」や「分子生物学」など、多くの研究分野の発達が続きました。その間、それぞれの分野の研究は互いに連携を保ちながら発展しましたが、それらの両極端に位置する細胞学と分子生物学の研究は、近年までほとんど直接的な係わりなしに研究が進められ、想定される機能分子を可視化して細胞内に位置づけることは困難でありました。しかし、これら各分野の進展を受けて近年創められた「細胞生物学」や「ゲノムプロジェクト」では、生命体を分子から形態まで理解することが研究の目標となり、細胞を構成する実体の相互の関連と物理的な位置付けが興味の対象となってきました。

このような生命科学の進展の中で、最近の物理学と化学の進歩が応用され、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などの新規な機器の開発も、ハードおよびソフト面で長足の発展を遂げました。このような高度な綜合的画像形成技術の導入により、生体機能の動的解析技術が進歩し、それらは、基礎生命科学は勿論、医学などの応用面においても、大いに活用されるべき高い水準に到達しております。

たとえば、酵母を例にとって説明しますと、細胞を前処理することなく、生きたままで、原子間力顕微鏡を用いて観察すれば、光学顕微鏡像よりも高倍率で微細に、その外形の情報を得ることができます。この機器を用いれば、多数の変異株の形態の比較を簡単に行うことができるでしょう。また、酵母を走査電子顕微鏡で観察すれば、細胞表面のガラクトマンナンの粒子を見ることができます。透過電子顕微鏡を使えば、細胞内の微細構造が観察できます。さらに、抗体を用いて行う免疫電子顕微鏡法によれば、特定のタンパク質の局在位置を知ることができます。その上に、連続切片像の画像処理によって、細胞全体の微細構造を立体的に理解することができます。

しかし、このような発達した現在の解析技術を享受するには、適切な指導者の下で、最低3ケ月の技術習得期間を要し、国際的に通用する写真1枚を製作するには、初心者は1年間努力しても難しい状態です。その上で画像解析によるデータの読み出しと評価の能力を得るには、さらに長年の経験を要するでしょう。一方、個々の研究機関で、原子間力顕微鏡、走査顕微鏡、透過電子顕微鏡とその周辺機器を設置し、いつでも高品質の実験データを出し得る状態にそれらの機器を保守するには、広い空間と高額の費用と長時間の労力を要します。このようなことから、多くの研究機関においては、微細構造の解明を伴う研究を行うのは、現在では大変困難であると思われます。

そのような研究の困難性を示す具体例を1,2お示ししましょう。例えばある研究者が蛍光顕微鏡を用いて、酵母細胞の輪郭と核の位置らしい部位にリング状に光る像が見える1枚のスライドを示し、問題とするタンパク質が、細胞膜と小胞体にあると説明したとしましょう。その結論の妥当性は蛍光顕微鏡像だけでは不十分です。彼はその結論の妥当性を、標識抗体を用いた別の実験で証明しなければなりません。細胞生物学関連の学会でも、多くの発表は簡単な蛍光顕微鏡写真を示すのみです。学会発表だけでなく学術雑誌においても、不正確な電子顕微鏡写真で機能分子を可視化するような論文がまかり通る状態にあります。

このような研究報告が横行する一因は、生物の微細な構成因子とその機能とを有機的に結びつける力量を持った研究者や技術者が極めて少ないことにあります。その理由として、長時間と忍耐を要する電子顕微鏡技術の取得が若い世代の研究者に忌諱され、より簡単に技術が習得でき、論文数が稼げる分野へと流れて、超微構造生物学を主たる研究テーマとする研究者数が激減していることがあります。

私たちのNPO法人の提案は、熟練研究者・技術者とそれぞれが装備する設備を有効に利用して、多分野の研究者とネットワークを組むことにより、直面している困難な状況を、容易に、効率よく、しかも短期間で、解決するソリューションの提供です。簡単に申しますと、研究者が困難とする解析技術のアウトソーシングです。また、この過程で、経験豊かで技術に優れたシニアとジュニアの研究者の交流が促進され、知識と技術の次世代への継承が円滑に行われるものと期待されます。こうして私たちは、本法人の設立により、生命科学の基礎と応用の両面に亘って、それらの発展に大きく貢献できると確信します。

どうぞ本法人の設立趣旨について深いご理解を頂き、温かいご支援を賜りますよう、強くお願い申し上げます。


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