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FIBマイクロサンプリング技術が拓く生物組織の三次元微細構造観察法


日立ハイテクノロジーズ 上野 武夫、 矢口 紀恵、今野 充
石谷 亨、大西 毅
綜合画像研究支援 大隅正子

樹脂包埋した生物組織の三次元微細構造を走査透過電子顕微鏡を用いて直接観察する方法についてご紹介します。試料作製には集束イオンビーム1)(Focused Ion Beam:FIB)マイクロサンプリング法を用います。FIBマイクロサンリング法による試料作製から観察までの手順の概略を図1に示します。数ミリ角に切り出した樹脂包埋試料(a)の一部をFIBにより厚さ約15µm程度に加工し(b)、その内部構造を透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)または走査透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:STEM)を用いて観察します(c)。これは目的とする組織の位置を確認するためです。その後、試料をFIB加工装置に戻し、目的箇所をFIBマイクロサンプリング法により摘出します(d)。 摘出した微小試料(マイクロサンプル)は試料回転機構を備えたFIB-TEM(STEM)共用ホルダーの試料台に載せ、0.1〜3µm程度の厚さにFIB加工します(e)。FIB加工後、試料をTEMまたはSTEMに挿入し、回転しながらその三次元構造を直接観察します(f)。


図1 FIB+TEM(STEM)を用いた樹脂包埋生物組織三次元微細構造直接観察のための試料作製と観察3)


Quetol 653 樹脂に包埋したイースト菌、Candida Tropicalis 2)を厚さ15µmに加工し、加速電圧200kVのSTEM専用機で観察した明視野STEM像を図23)に示します。この観察で包埋樹脂内における菌の位置が特定できますのでその部分を残すようにFIB追加工を行います。

通常のTEMではこの厚さの試料の透過像の観察は極めて困難ですが、STEM像は色収差の影響が少ないので、この厚さの試料でも鮮明な像が得られます。


図2 653 樹脂包埋Candida Tropicali の200kV-明視野STEM像

図3はその中の一部を厚さ0.3µmに加工し、互いに40°違う方向から観察した暗視野STEM像です。ミトコンドリアの外膜や内部微細組織の立体的な構造が鮮明に観察されています。このようにFIB加工技術を用いれば樹脂包埋試料の任意の組織を任意の方向から観察することができます。FIB加工技術はバイオサイエンスにおける電子顕微鏡の有用性をさらに高める画期的試料作製法として注目されています。



図3 厚さ0.3µmに加工したQuetol 653 樹脂包埋Candida Tropicalis の200kV 暗視野STEM像


【参考文献】

  1. T. Ishitani, et al. : J. Electron Microscopy, 43, 322-326 (1994)
  2. Osumi M, et al.: Arch. Microbiol, 99,181-201
  3. T. Kamino, et al.: J. Electron Microscopy, 53, 563-566 (2004)
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