トピックス

CT技術で厚切り生物試料TEM像を立体構築し構造解析するトモグラフィー法の例

UCSD / National Center for Microscopy and Imaging Research
山田直子

概要

厚切り切片のTEM像には生物試料の細胞内部や生体内の微細構造の情報が多く含まれており、超薄切片のTEM像に比べて1枚の写真の観察でも厚さ方向の構造物を立体的に観察する事が出来る。
ステレオ写真で観察する事でも、ある程度の立体構造情報を得る事が出来るが、厚切り切片試料にトモグラフィー法(CT)を用いれば、微細な立体構造そのものを再構築する事が出来る。
より厚い切片試料を観察するには超高圧電子顕微鏡(UHVEM)の使用が好適でありUHVEM利用の3次元CT観察法は、電子顕微鏡(EM)による微細な構造情報と光学顕微鏡(LM)観察による動的な形態や物質情報の理解を繋ぐ大切な役割を果たしている。

CT観察方法は以下の通りである

図1,2に示すようにTEM撮影は、試料傾斜角度を少しずつ変化させながら目的物の観察方向を連続的に変化させた像を撮影する。通常は最大傾斜角度±60度で傾斜角度の間隔を2度で撮影するが、目的物の構造などによっては傾斜角度を1度〜5度の間隔に設定して撮影する。高精細に立体構築して目的物の構造解析をするには、試料の傾斜角度を高角度傾斜にして傾斜角度間隔は小さくすると良い。CT観察法で得られたTEM像はコンピュータに取り込み、位置補正をした後、目的物の3次元像を再構築し得られた微細構造で構造解析を行う。

事例1: マウス小脳プルキンエ細胞の樹状突起の観察例を示す

樹状突起の長さは立体構築後3次元計測でLMの2次元計測の実長の約1.5倍あり、微細構造ではZ軸方向が高精度に観察された。スパイン形状はダブル型、糸状型、細型等の多種に分類出来た。長さ2−3μmと長いスパインは、ネック部分では細く直径0.15μm以下であるが、樹状突起から連続で先端までを明らかに観察することが出来た。3次元立体像を構築し正確な形態的特徴を把握し、更には樹状突起及びスパインの定量的な考察を進める事が可能である。

事例2: ニワトリ胚、神経節神経突起の形態を立体構築する

CT技術を用いた立体構築は上記に示す通り複雑に構成された神経突起、及び神経突起表面と周辺細胞との相互の関連を明瞭に示す事が出来た。得られた構造の形、数、サイズ、周辺細胞との関連などは解析して定量化する事が出来る。数値化した構造は機能との関連を理解するのに有効である。

右写真はイムノゴールド法とCT法を用いた神経突起表面におけるアセチルコリン受容体の局在を示す。立体構築した神経突起表面には、イムノゴールド法で局在を示す標識金の分布が観察され突起表面部にはアセチルコリン受容体の局在が判明した


まとめ

高精細に複雑な構造を立体構築するCT技術では、特に厚切り試料を立体再構築する事で目的物を効果的に構造解析出来る。解析情報には生体機能を理解する情報も多く含まれる事から、今後CT法は多く活用される方法と考えられる。


前ページ 前ページ 次ページ 次ページ