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認定NPO法人 第7回IIRSセミナーと第6回IIRSサイエンスカフェのご報告

主催: 認定NPO法人 綜合画像研究支援(IIRS)
共催: 日本女子大学バイオイメージングセンター(BIC)

去る2011年11月12日(土)に綜合画像研究支援と日本女子大学バイオイメージングセンター(BIC) (共催)により、第7回IIRSセミナー鼎談『電子顕微鏡による生物試料3D観察の夜明けから現在、そして将来』第6回IIRSサイエンスカフェ『アセチルコリン受容体のしくみに迫る!−構造解析から分子メカニズムの解明へ−』を開催いたしましたのでご報告致します。

日  時: 2011年11月12日(土)
13:30〜15:30 第7回IIRSセミナー
16:00〜 第6回IIRSサイエンスカフェ
場  所: 日本女子大学百年館高層棟5F会議室(502.503)

〜第7回IIRSセミナー〜

鼎談『電子顕微鏡による生物試料3D観察の夜明けから現在、そして将来』


講 師: 濱  清 先生
大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所 名誉教授
和氣 健二郎 先生 ミノファーゲン株式会社 顧問、東京医科歯科大学 名誉教授
光岡 薫 先生 (独)産業技術総合研究所 タンパク構造情報解析研究チーム長

〜第6回IIRSサイエンスカフェ〜

『アセチルコリン受容体のしくみに迫る!−構造解析から分子メカニズムの解明へ−』


講 師: 宮澤 淳夫 先生 兵庫県立大学大学院 生命理学研究科 細胞構造学分野 教授
(独)理化学研究所 放射光科学総合研究センター

『電子顕微鏡による生物試料3D観察の夜明けから現在、そして将来』鼎談後記

濱 清(大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所 名誉教授)

形態学は生物の姿形を探りそこから機能の仕組みを解き明かす学問である。その場合、重要な2つの点がある。

第1のポイントは美しいこと。生体を作っている構造要素には分子のレベルから個体のレベルに至るまで巧妙に機能に対応する3次元の姿、形を持っている。得られた形態情報が真実に近いかどうかを知る為には勿論他の手段で得られた情報との比較検討が必要だが、形態学者にとってまず大切なのは得られた所見が美しい事である。ある時、有名な数学者に「数理研究に駆り立てる動機は何ですか」と不躾な質問をしたら、「美しい解を求める事です」とのお答えを戴き良く理解できた。

第2のポイントは視野分解(Field Resolution)の視点である。生体の機能を理解するためには機能に関わる分子或いは巨大分子の構造と機能を知る必要があることは勿論だが、分子レベルの機能を細胞の機能、組織の機能へと統合していくためには、機能分子を取り巻く細胞内環境の状況、他の機能分子、細胞小器官、細胞骨格などの構造要素との空間的な位置関係などの情報が必要である。分子の機能解明の為には高倍、高分解能の観察が必要だが、高倍では視野は極端に狭くなり、高分解能のための薄い試料では細胞機能の理解に必要な形態情報と環境情報は殆ど含まれていない。

例えば超高圧電顕では5.0μの厚い試料を1nmの分解能で観察できるので4000倍程度の倍率を選べば1視野内に含まれる有効な構造情報量は0.1μ以下の切片を用いた高倍率観察に比べて飛躍的に大きくなる。機能解明に必要な倍率と試料の厚みを選び、一つの視野内に含まれる有効な形態情報の量を増やす工夫が必要なのである。

形態学者として見事な電子顕微鏡写真を示し続けて来られたDon Fawcett先生は現役中にも屡々(しばしば)アフリカのサバンナで野生動物の見事な生態写真を撮られた。先生の電顕写真に見られる細胞微細構造の静止した美しさと野生動物の動きに見られる生命の美しさは見事に補完していた。

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和氣 健二郎(ミノファーゲン株式会社 顧問、東京医科歯科大学 名誉教授)

今回の鼎談に参加させていいただいただき、濱先生、光岡先生のご講演を拝聴し、電顕による3D観察の輝かしい成果に驚き、最近の進歩に疎い私は大きな刺激を受けました。私の話はこの時代にそぐはないものと反省しています。ただこんなことも3次元研究への発展の陰にはあったのか、と若い研究者に考えて頂けたなら幸いと思う次第です。

私はもっぱら組織学の研究に電顕を利用させていただいてきたものです。電顕を習い始めた1960年代は、組織学研究に電顕はなくてはならないものでした。何を観ても新しい電顕研究は活況を呈していました。その後細胞生物学の時代が始まり、さらに分子生物学へ突入した頃には、全般的には生物系の電顕研究は潮を引くように衰退し、現在に至っています。偶々論文に掲載される電顕写真は切手大になり、電顕写真から現象を考えるよりは、他の方法で得た結果を補強する手段へと変わっています。しかし考えてみると、生体の複雑多様な微細構造がこの半世紀にすべて見終わってしまった筈はありません。そのような時代背景のなかで今回の鼎談が意味することを、参加者それぞれが考えていただけたのではないでしょうか。

改めてこの鼎談を企画された大隅正子先生はじめ関係各位に厚く御礼申し上げます。

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光岡 薫((独)産業技術総合研究所 タンパク構造情報解析研究チーム長)

この度は、第7回IIRSセミナーでの鼎談の司会をさせていただき、ありがたく思っております。濱先生と和氣先生の示された電子顕微鏡写真は大変美しく感銘を受けると同時に、生物試料の三次元観察と言っても、いろいろな目的があり、目的にあった手法を選ぶことの重要性を再認識させていただきました。

私自身は、多くの顕微鏡写真を撮影して、そこから分子レベルの対象の三次元構造を再構成するという研究をしており、多くの写真を撮るという作業を繰り返しながら、そこから、画像解析によりどのように情報を取り出すかを試行錯誤しています。それに対し、濱先生は超高圧電顕により、より大きな試料から高い分解能の像を得て、そこから三次元的な情報を取り出しており、また、和氣先生のSEM像は、組織の三次元情報を直接目で見たような迫力がありました。そして、それらの研究に共通することとして私が感じたのは、通常は見えない三次元構造を、顕微鏡を用いて見えるようにすることの喜びであり、今後も電子顕微鏡を用いた構造研究を発展させていきたいと考えています。また、私自身としては、高い分解能での構造研究を進めていきたいと考えており、その中で高分解能の光学顕微鏡の分野との共同研究を希望しており、鼎談の中で、そのような未来についてもご議論いただきました。良い研究には、そのような専門でない技術を積極的に用いる必要があると考えており、そのような共同研究を促進する場としてIIRSに期待しております。

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第7回IIRSセミナー&第6回サイエンスカフェに参加して

諸根 信弘(京都大学 物質-細胞統合システム拠点 Heuserグループ)

一昨年あたりから、本格的な3D映画が登場。デジタル撮影による映画制作が、緻密な3Dの画像処理計算を可能にしたそうだ。映画だけでなく、幼児向けの書籍や玩具にも、3D機能搭載は珍しくない。今年のクリスマスプレゼントは、やはり3Dグッツかな?顕微鏡を愛するビジュアル系の研究者として、ほんとうに素晴らしい時代になったと思う。電子顕微鏡の世界でも、革新的な3D技術が登場してきた。「透過型電子顕微鏡を基盤とするナノレベル・トモグラフィー」と「走査型電子顕微鏡と集束イオンビームによる大規模な(組織・細胞まるごとの)3D構造解析法」。これらを駆使すれば、一昔前ならミッション・インポシブル的な実験でも、大学院生があっさりこなしてしまう。もうそんな時代が到来している。光学顕微鏡の超解像化も忘れてはいけない。4文字の略称も、SSIM、STED、PALM、STORMと増えてきた。20nmの解像度と言えば、タンパク質分子複合体の大きさに相当し、電子顕微鏡との本格的な相関も、もはや青写真ではなく現実的な話題だ。

今回のIIRSセミナーは、非常にタイムリーかつ貴重な機会でした。この世界の至宝である濱先生、和氣先生をお迎えして、ほんとうに夢のような幸せな時間を過ごすことができた。Keith Porter先生が米国コロラド大学に超高圧電子顕微鏡を導入するに際に濱先生にご相談され、大阪大学超高圧電子顕微鏡によるデータを参考にされた御話や、和氣先生が観察対象とされた構造のひとつが、現在ではFenestraeと呼ばれて?構成タンパク質のクローニングをGeorge Palade先生の最後のお弟子さんがされた御話等々、歴史的な話題にフロアから交流をさせて頂くことも出来た。77年のJCBに掲載された、Palade先生が執筆された「Porter先生への追悼文」を改めて拝読する機会も得た。何もかもが素敵なこのようなセミナーに参加させて頂けたこと、心から感謝の意を表したい。ありがとうございます!

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山田 博之(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンス部 細菌検査科)

今年はIIRSセミナーとサイエンスカフェが総会とは別日程での開催となり、連続して聞くことができました。後半のサイエンスカフェでの宮澤先生のアセチルコリン受容体の構造解析と分子メカニズムに関するご講演は所用のため途中退席させて頂くことになり、残念でした。前半のセミナーの鼎談では、濱先生、和気先生、光岡先生が電子顕微鏡による生物試料の3次元観察のための様々な手法をご紹介下さいましたが、中でも私が最も興味を惹かれたのは、樹脂包埋試料で集束イオンビームを用いて連続切削面を形成しつつ切削面を電子ビームでSEM観察する連続切削面走査電子顕微鏡(SBFEM)でした。この分野の技術進展は著しく、連続切削の深さは樹脂包埋試料における超薄切片の厚さより格段に小さいのですが、連続超薄切片より広い面積を観察することが可能ということでした。透過電顕観察は定性的な分析ではその分解能から他の手法の追随を許しませんが、観察領域が限定されるため定量的解析に最大の弱点があると言わざるを得ません。この点においてSBFEMは通常の超薄切片に相当する試料面積を連続的に切削し、その3次元領域における微細構造の定量を可能にする技術であり、今後、透過電子顕微鏡観察に替わる有力な手法となる可能性を実感しました。超薄切片ではその薄さ故に超薄切・観察中に試料の変形が伴いがちですが、SBFEM法ではブロック側の試料情報を反射電子の情報で得るため、樹脂包埋された試料の構造がより忠実に観察できる可能性があります。また、少なくとも、オスミウム固定による電子密度で観察可能なので、切片の電子染色による人工産物や汚染を回避できる可能性もありそうです。医学分野においては、高分解能による定性的分析に3次元領域の定量分析が加われば、未知の病原体の関与が推測される難病の機序解明などに大きく役立つ可能性があるのではないでしょうか。いつもながら、大変有意義なIIRSセミナーを拝聴できたことに感謝いたします。

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写真集

第7回IIRSセミナー写真集

鼎談進行役と講師をされた光岡 薫先生

講師をされた両先生方

講師の濱 清先生

講師の和氣 健二郎先生

熱心に質問する参加者

講演に聞き入る参加者

第6回IIRSサイエンスカフェ写真集

講師の宮澤 淳夫先生

質問する京都大学 諸根 信弘先生

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