お知らせ
<< お知らせ一覧へ戻る

第37回日本分子生物学会年会フォーラムのご報告
膜脂質ナノ分布を電顕で見る
Looking at membrane lipid distribution by electron microscopy

去る11月25日に第37回日本分子生物学会において、演者に藤本豊士先生をお迎えし、綜合画像研究支援が企画致しました、フォーラム『膜脂質ナノ分布を電顕で見る』を開催しましたので、以下のように報告します。

演  者 藤本 豊士 先生 名古屋大学大学院医学系研究科分子細胞学 教授
日  時 平成26年11月25日(火)19:15〜20:45
会  場 パシフィコ横浜・会議センター 3階 311(第6会場)
オーガナイザー 大隅 正子(日本女子大学名誉教授/認定NPO法人綜合画像研究支援 理事長)
山本 正幸(自然科学研究機構 基礎生物学研究所 所長)

フォーラムの開始に先立ち、大隅理事長より例年のようにIIRSの事業についての簡単な説明のあと、今年は創立十周年を迎え、11月7日に記念事業として式典・学術講演会・祝賀会を開催したことを紹介されました。特に式典で祝辞を頂いた文部科学省研究開発基盤課長渡辺その子様の祝辞に添えて話された、「ライフサイエンス分野の先端計測機器の現状と今後の課題」の講演を紹介されました。そして、研究のはじめには、「先ず自分の研究材料、生物の顔つき」、を見て下さいと強調されて、藤本先生のご講演が開始されました。

名古屋大学の藤本豊士教授の講演は「膜脂質ナノ分布を電顕で見る」というタイトルで行われました。急速凍結・凍結割断レプリカ標識法を用いることにより、膜脂質の膜内での二次元的な分布を半定量的に観察できるだけでなく、膜の非対称性(内葉と外葉で膜脂質の組成が異なること)を解析できるという研究成果が紹介されました。この方法による膜脂質の二次元的分布の解析により、GM1などのガングリオシドやPI(4,5)P2など、界面活性剤不溶性の膜画分に共通に濃縮される膜脂質が、細胞膜上では異なる性質のドメインを作って分布することが明らかにされました。生体膜での脂質ドメインの実態がナノレベル可視化できるようになったことは非常に重要な成果であると考えられます。また一方、膜の非対称性に関しては、凍結割断で内葉と外葉を物理的に解離させることにより、細胞膜だけでなく、細胞内オルガネラの膜も解析できる点は他の方法にない利点であります。この方法を用いることにより、オートファゴソームでのPI3Pの分布が初めてクリアに描出され、哺乳類細胞と酵母細胞で大きな違いがあることが分かりました。膜の非対称性は赤血球膜以外ではよく分かっていない点が多いので、今後の発展が大いに期待できます。

藤本先生のご講演は、実にきめ細かく実験が組まれていることが理解され、先生のご性格を反映したご講演は、講演時間を延長するほど、密度の高い質疑応答で時間が過ぎるのも忘れるほどでした。

プログラム

19:15〜19:20 趣旨説明
  大隅 正子(認定NPO法人綜合画像研究支援)
19:20〜20:20 膜脂質ナノ分布を電顕で見る
  藤本 豊士(名古屋大学大学院医学系研究科分子細胞学 教授)
20:20〜20:30 総合討論とまとめ
  山本 正幸(自然科学研究機構 基礎生物学研究所)
講演される藤本豊士先生

講演される藤本豊士先生

フォーラムに参加して

例年より2週間ほど早く開催された第37回日本分子生物学会の初日の夜に、IIRS主催の年会フォーラムが開催されました。IIRSは、日本分子生物学会ではほぼ毎年フォーラムを主催しており、私も何回か参加させていただきました。今回は、名古屋大学の藤本先生による「膜脂質ナノ分布を電顕で見る」というご講演が行われました。

藤本先生のご講演に先立ち、IIRSが進めている可視化技術の普及におけるサポート事業、および本フォーラムの趣旨について、大隅先生からご紹介がありました。

藤本先生のご講演では、膜脂質の分布を明らかにするというご研究において、先生が開発されてきた系の説明と研究成果についてわかりやすく解説していただきました。膜脂質分布の同定は、これまでは解析が困難な研究分野でしたが、藤本先生が開発されたQF-FRLを用いることで、様々な膜脂質の分布を調べることが可能になり、ご講演ではPI3PやP1(4,5)P2などの分布、そしてオートファジーにおける研究成果についてご説明いただきました。特に印象に残ったのは、オートファゴソーム膜の内葉・外葉の非対称性が明確に区別された非常に綺麗な写真で、細胞内構造物を形成する膜脂質の分布がこれほどきちんと区別できるものかと感銘を受けました。今後、オルガネラなどの様々な細胞内構造物の膜動態や非対称性の解明につながるのではないかと期待が膨らむご講演でした。

私はこれまで、植物オルガネラの動態やタンパク質の局在解析のために、イメージング解析を行ってきましたが、最近、オルガネラ膜脂質の動態に関与すると考えられる因子が同定されたこともあり、膜脂質について勉強を始めたところでした。実は藤本先生のQF-FRLの発表は、2週間ほど前に別の研究会で伺う機会があったのですが、その時は15分程度のご発表でしたので、今回、じっくりとお聞きすることができて、私にとって大変有意義なフォーラムでした。

ポスターセッション終了後の19:15開始のフォーラムでしたので、皆さんお腹がすいていたかもしれませんが、参加者にとって、研究の視点からは十分に満たされたものと思います。

藤本先生、フォーラムを企画して下さった大隅先生、山本先生、参加者の皆様、ありがとうございました。

基礎生物学研究所
真野昌二
▲ページtopへ
<< お知らせ一覧へ戻る