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日本植物学会第79回大会シンポジウムのご報告
形態学と生理学の融合に向けて
―植物の「形」と「現象」の狭間を埋める研究の最前線―

去る2015年9月6日(日)日本植物学会第79回大会シンポジウムにおいて日本植物形態学会、綜合画像研究支援の共催によりシンポジウムを開催しましたのでご報告致します。

日 時 平成27年9月6日(日) 15:00〜18:00
場 所 朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンター(新潟市)
主 催 日本植物学会
共 催 日本植物形態学会、認定NPO法人 綜合画像研究支援(NPO IIRS)
オーガナイザー 宮沢 豊(山形大学)、唐原一郎(富山大学) 、鮫島正純(NPO IIRS)

プログラム

(敬称略)

15:00〜15:05  
はじめに
宮沢 豊(山形大学)
15:05〜15:35  
1pSD01 X線マイクロCTを用いた種子発芽過程の研究
山内大輔1,唐原一郎2,峰雪芳宣11兵庫県大・院・生命理学,2富山大・院・理工)
15:35〜16:05  
1pSD02 超解像顕微鏡を用いたタイムゲートイメージング
佐藤良勝,杉本渚光(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所)
16:05〜16:35  
1pSD03 電子相関顕微鏡法:蛍光タンパク質標識した細胞小器官を走査電子顕微鏡で捉える
豊岡公徳(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
16:35〜16:40  
休憩
16:40〜17:10  
1pSD04 植物組織における低分子量物質分布の質量顕微鏡による可視化
三村徹郎1,姉川彩1,大西美輪1,山本浩太郎1,石崎公庸1,深城英弘1,高橋勝利21神戸大学・院・理学研究科・生物学専攻,2産総研・創薬基盤研究部門)
17:10〜17:40  
1pSD05 形態変化を伴ったオルガネラ間相互作用の解析〜オルガネラ間接着力測定の試み〜
及川和聡1,真野昌二2,近藤真紀3,坂本亘4,三ツ井敏明1,飯野敬矩5,細川陽一郎5,西村幹夫31新潟大・農,2基生研・多様性,3基生研,4岡山大・光環境,5奈良先端・物質創成)
17:40〜18:00  
総合討論 唐原一郎(富山大学)
おわりに 鮫島正純(NPO IIRS)

日本植物学会第79回大会シンポジウム「形態学と生理学の融合に向けて ―植物の「形」と「現象」の狭間を埋める研究の最前線―」のご報告 唐原一郎(富山大学・大学院理工学研究部)

構造を理解する形態学と機能を理解する生理学は、時に対比されながらも数世紀にわたり植物学を支えてきた学問領域です。形態学は、形を見ることを追求する中で先進的な解析技術と深く結びつくことによって、古典的なそのイメージから脱却・進化し、現代生物学の一翼を担うに至っています。一方で、形態解析技術の急速な進化、すなわち時間・空間分解能の向上による形態・構造の理解に生理機能の理解が追いつかず、両者に乖離が生じているのも事実です。そこで本シンポジウムでは、植物の形態・構造と生理現象の理解を橋渡しする先端的研究や技術を紹介し、現代植物学の課題について議論し、それを解決する融合研究の促進を図ることを目指しました。

形態学会・IIRSの共催ということで、シンポジウムの前半ではイメージング・テクノロジーに軸足を置きながら、さまざまな分解能のレベルで生理機能に近づくアプローチの講演をお願いしました。山内先生には種子程度の比較的大きなものの非破壊観察を可能とする、SPring-8でのX線マイクロCTを用いた種子発芽過程の動態の研究について、佐藤先生にはタイムゲートイメージングを用いることで空間分解能をさらに高めた、究極の光学顕微鏡技術とも思わせられる超解像顕微鏡観察法について、それぞれ講演をいただきました。豊岡先生には、固定包埋後にGFP蛍光を復活させることを用いて光学顕微鏡(共焦点レーザー顕微鏡)観察した後、電子顕微鏡(FE-SEM)観察で微細構造を確認することで両顕微鏡観察の間をシームレスにつなぐ試みである、電子相関顕微鏡法により蛍光タンパク質標識した細胞小器官を走査電子顕微鏡で捉える研究について講演をいただきました。

後半では、より機能解析の観点から形態へアプローチする講演をお願いしました。三村先生には、10 μmのサイズのレーザースポット径でスキャニングしながらMALDI法質量分析を行う局所的なメタボローム解析により、植物組織における二次代謝産物など低分子量物質分布のマッピングを行うという、まさに形態と生理機能を直結させる可能性を秘める質量顕微鏡の技術について、講演をいただきました。及川先生には、高強度のフェムト秒レーザーによる衝撃波を用いてペルオキシソームと葉緑体の間の接着力を測定するユニークな試みをふまえ、さらにミトコンドリアも加えたオルガネラ間相互作用解析について講演をいただきました。

最後に講演者の先生方に前に出てきていただき、参加者との間で総合討論を行いました。特に、まだ余韻の残る最後の及川先生の講演に関して、葉緑体運動の専門家でもある演者の佐藤先生や大阪大学の高木先生を交えて、細胞運動・オルガネラ動態解析の観点から、終了時間ギリギリまで熱いディスカッションが続き、最後には打ち切らせていただく形になりました。本シンポジウムが開催された大会初日の午後には、五つのシンポジウムと二つの一般口演が計7会場で同時進行していたにもかかわらず、本シンポジウムには約140名程度もの参加があり盛況のうちに終えることができました。本シンポジウムの講演内容に関しては、日本植物形態学会が発行するPlant Morphology誌のVol. 28において、演者の先生方にミニレビューを執筆して頂く予定ですので、ご期待ください。最後になりましたが、本シンポジウムの講演を快くお引き受けくださいました先生方に深く感謝いたします。

左より、宮沢豊オーガナイザー、唐原一郎オーガナイザー、三村徹郎先生、豊岡公徳先生、及川和聡先生、佐藤良勝先生、山内大輔先生、鮫島正純オーガナイザー

2008年度にIIRSは、生命科学の発展に有効な組織と考える、「微細形態科学研究装置の共同利用を推進するためのネットワーク」の創設に向けての活動を開始しました。そして、その一環として、第72 回日本植物学会大会において、当時日本植物形態学会会長であられた、今市涼子先生(前IIRS副理事長)のご了解を得て、シンポジウム「ライフサイエンス領域における微細形態計測装置共同利用のネットワーク創設に向けて」を、同学会と共催して開催しました。以来、IIRSは、イメージングとその関連技術の普及・啓発を目指して、毎年の植物学会大会でシンポジウムを開催して参りました。

今年のシンポジウムの後で、ご講演を聴いておられたシュプリンガー・ジャパン梶i昨年、日本植物形態学会25周年記念書籍Atlas of Plant Cell Structureを出版)の編集部ライフサイエンス担当の方から、このシンポジウムの内容を纏めて、英文の書籍にしたら如何か、との有難いご提案を頂きました。日本植物形態学会と共催するIIRSのこのシンポジウムが、このように評価されるまでに成長しましたことを皆様にご報告するとともに、今後の更なる発展を、現会長の野口哲子先生とともに、祈念します。

大隅正子

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