お知らせ
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第12回IIRSセミナー(日本顕微鏡学会後援) 「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策
〜調査研究から抽出された今後の課題〜」
第13回アカデミックサロンのご案内 「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策
〜参加者による課題の抽出と将来展望〜」
の報告

去る2016年6月4日(土)に、第12回IIRSセミナー(日本顕微鏡学会後援)および第13回アカデミックサロンを以下のように開催致しましたので、報告します。

日 時 2016年6月4日(土)13時00分〜18時00分
セミナー:15:00〜16:00
アカデミックサロン: 16:10〜18:30
場 所 東京大学工学部武田先端知ビル5階武田ホール

プログラム

第12回IIRSセミナー
テーマ:「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策 〜調査研究から抽出された今後の課題〜」
講演者:澤口 朗先生 宮崎大学医学部教授
 
第13回アカデミックサロン
総合討論:「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策 〜参加者による課題の抽出と将来展望〜」
 
併設で、商業展示をし、新製品情報などをご覧いただきました。

主催者よりの報告

本年度のIIRSセミナーは、昨年10月から開始した「平成27年度下期科学技術調査研究(申請代表者澤口朗先生)」の進捗状況のご報告の場とさせて頂きました。澤口先生には司会役をお願いし、ご講演からそれに続くアカデミックサロンでの総合討論の進行までも務めて頂きました。

ご講演の後には、和氣先生より永いご経験から湧き出る貴重なご意見を頂戴し、また総合討論では、若手研究者から積極的に手が挙がってフレッシュなご意見を頂くなど、活発で和やかな雰囲気に包まれました。ビールやワイン、そして美味しいお料理を頂きながら参加者のお話が弾みました。また、商業展示ではご常連の鞄立ハイテクノロジーズ、日本電子梶Aライカマイクロシステムズ鰍ノ加えて、今回は潟jコンインスティック、鞄本ローパー、鞄本レーザー、概CKなどの新しい企業にもご参加をいただき、会場が賑わいました。FIBやミクロトームで切削面を出すよりも早く処理のできるレーザーで面を出して行う3D構築法に見入っている研究者もおられました。

かくして、IIRSらしい和やかな雰囲気の内に今年度のセミナー、アカデミックサロンは幕を閉じました。この後の参加者のご感想をご参照下さい。

参加者から頂いた感想

第12回 IIRSセミナー・第13回 アカデミックサロンを終えて
澤口 朗(宮崎大学医学部解剖学講座 超微形態科学分野)

今回の第12回IIRSセミナーは「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策 〜調査研究から抽出された今後の課題〜」をテーマに、一般財団法人・新技術振興渡辺記念会より助成いただきました平成27年度下期科学技術調査研究の中間報告として、医学部の学生を対象に実施したアンケート調査結果や、若手研究者育成・支援策の現況についてご紹介いたしました。次に会場を移して開催された第13回アカデミックサロンは、IIRSセミナーを引き継いだ総合討論形式として「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策 〜参加者による課題の抽出と将来展望〜」をテーマに皆様の率直なご意見、ご感想を伺いました。

優れた若手研究者を育成することは我が国の発展に不可欠であり、超高齢化社会を迎え、18歳人口が年々減少する厳しい状況を踏まえ、多くの可能性を秘めた若手の人材を発掘し、研究者として育成することは喫緊の課題であります。これまでの調査において、宮崎大学、東京医科歯科大学、金沢医科大学の医学科新入生(計306名)を対象に「研究とは?」と設問したアンケート調査を行った結果、「探究・追究」= 27.8%と「発見・解明」= 26.5%をあわせて過半数を占め、「人類・社会・未来への貢献」= 8.8%、「科学の実践」= 7.5%、「ロマン・好奇心」= 4.6%が続くなど、研究に対する高い意識を伺い知ることができました。同様に「博士とは?」という設問に対して、「専門分野を究めている人」= 58%、「世のため人のために活動する人」=28%、「学び続ける人」=11%といった回答が並び、博士(研究者)に対して学生が高い評価をもっていることも明らかとなってきました。現在、官民学をあげた多角的な若手研究者育成・支援策が実行されていますが、その対象となる若者の研究に対する意識や理解は高く、「では何故、研究者の道を選ばないのか?」という問いに対する“本音”を明らかにしていくことが有効な支援策に直結すると考え、鋭意、調査を展開している次第です。

また、同時に展開しております海外調査研究では、米国のMD/PhDコースをモデルにカリフォルニア大学アーバイン校の現地訪問調査を実施しております。全米医学部を対象とした統計で注目すべきは、コース選択者の40〜45%を女子医学生が占める大学が数多く並んでいる点です。我が国におきましても医学研究者育成コースを設置する大学が増えており、次回の現地訪問調査から、取り入れるべきコース内容など有益な情報を入手できればと考えております。

今後も皆様と共に、生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策について検討を重ねて参りたく、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

第12回 IIRSセミナーでの澤口 朗 教授のご講演「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策〜調査研究から抽出された今後の課題」を拝聴して
和氣健二郎(東京医科歯科大学名誉教授)

近年わが国におけるノーベル賞受賞者数の増加から、日本の科学のレベルの高さが国際的に認められてきた反面、日本の大学の国際的相対的地位の高さが問題視されるようになった。またノーベル賞受賞者が若手研究者として研究していた頃の研究環境を現在と比較すると、ハード面では改善されてきたと思われるが、今回、澤口教授の詳細な調査研究から知ったことは、若手研究者の育成というソフト面では、必ずしも改善されたとは思えない状況である。医学教育の現場を離れてすでに十数年が経過している私には、この問題について正鵠な意見は述べられないが、在職期間中の経験を踏まえて述べることにしたい。

  1. 医学生の研究意欲調査
    3大学医学科新入生の計約300名に対する「研究とは」のアンケート結果では、ほとんどの学生が「研究」を、価値あるもの、人類の福祉に役立つものと捉え、多くの学生が研究に携わることを夢みているように思われる。中高時代に医学研究に生涯身を投じた有名な医学者の伝記などを読み、自分も医学研究に憧れ医学部を受験した学生も少なくないと伺える。しかしその意志を医学部卒業時或いは研修医期間まで持ち続けているかが問題で,その時期を対象とした意識調査が待たれる。
  2. 海外留学希望者の激減
    十数年前に比べ医系に限らず海外留学希望者が激減している。これには個人的な理由のほかに学生(大学院生を含む)を取り巻く社会情勢の変化も見逃せない。一般に社会(国)が成熟すれば、外国から学ぶことは少なくなるのは当然としても、わが国も欧米並みに成熟したとして座視してよいものであろうか。
    個人的理由:海外で研究するという意欲の減退が感じられる。中国や韓国の学生と比較しても昨今の学生の意欲の低さは歴然としている。つまりハングリー精神の欠如である。
    社会的理由:戦前戦後は単身留学が普通であった。現在では留学するなら夫婦で、あるいは一家でになった。最近は夫婦共稼ぎが多く、夫婦とも仕事を長期に休むことが難しい状況にある。本人が留学を希望したとしても、大学の医師不足(後述する)から、医局としてはおいそれとは長期に休ませられない。以前は海外留学の2年間は休職扱いになり、帰国後はもとの席に復帰できたが、現在ではその余裕がなく、1〜2年留学するなら大学を止めて行くのが普通になった。それでは帰国後が不安である。
  3. 学位よりも専門医
    澤口教授も指摘された通り、若手医師は学位より専門医に魅力を感じているようである。医療制度改革の方針で専門医制度の改善が実施されている。
    2017年4月から2年目の研修医(インターン)を対象に新専門医制度下の専攻医募集がはじまる。従来の専門医の認定は各学会にまかせられていたが、新制度では、日本専門医機構という第三者機関が行うようになる。この制度の実施と大学院制度との関係についてなお明確にされていない。
  4. 大学病院に若手医師が少ない理由
    以前には医学部を卒業すると1年間のインターンを経て母校の医局に入局する者が多かった。現在ではインターンは2年(研修医)になり、各地の研修指定病院を学生自身が決めることになった結果、卒業後は母校に残らず大都市やその周辺の研修指定病院で研修する学生が増加した。地方の医学部では母校に残る若手医師数が激減している。
  5. 医学部指向高校生の生物学離れ
    医学研究には理系、とくに生物学,化学、物理学,数学が重要な科目である。
    ところが医学部受験生で生物学を選択する学生はほとんどいない。なぜなら入学試験で物理、化学なら良い成績がとれても、生物学でそれに匹敵する点数をとることは難しいからである。しかも昨今専門科目が教養課程を圧迫し履修時間がきりつめられている。米国ではリベラルアーツの4年制大学を終えてから医学部に入学する。例えば生物学では、最新の細胞生物学、遺伝、発生、進化、分子生物学を含む分厚い教科書で、彼らは医学部入学以前に勉強している。自然科学の基礎が出来上がった学生が医学を学ぶようになっている。
  6. 基礎医学研究を医学以外の理系学部出身者に求めること
    私が所属している日本解剖学会でも多くの理系学部出身者が活躍しておられる。私が昔いた教室では教授が積極的に生物学出身者を採用し、教室の陣容は医系と理系が半々であった。基礎医学研究は互いの特性を生かし、影響し合うことが最もよいという考え方であった。澤口教授の講演の後の総合討論で、「医学部出身者はみんな臨床へ進んでもらい、研究は理系出身者にまかせればよいではないか」というご意見があった。米国ではほとんどそれに近い状態ではないだろうか。すでに述べたように、米国の医学生も理系学生も同じリベラルアーツを履修しているところが、わが国の現状とは異なる。わが国では大学教育の基本から乖離した道を歩んで来た若手研究者が、研究のテーマが一致したとしても、基礎医学部では少ない教育人員の制約のもと、理系出身スタッフが多大な時間を要する医師教育に携わる負担に悩む場合を多くみてきた。それぞれの特性は小さな器の中では生かされないのである。教育機関ではなく、医学系研究所なら理系研究者の活躍の場は大きいだろう。

最近、元いた大学の同僚に会うと、決まって「先生はいい時期におやめになりましたね。今は大変ですよ」と、挨拶される。今は教授は研究費申請の書類書きや教育改革,会議、会議で、大変だそうだ。何せ18歳人口の減少からか、意欲ある学生が減り、大学運営に影響する国家試験の合格率が気になる医学部・歯学部も少なくない。若手研究者はそのための補修授業に狩りだされ,研究時間は削がれる。一方大学教員すべてに定年制が敷かれ、例えば助教なら三年毎に業績審査がある。「研究」というものは、歴史をみても、その時代時代によって陽が当たる領域を除いて、常に外部から圧迫されるものと思う。それを跳ね返す強い意識を持たなければ研究者にはなれないのではないだろうか。

第12回IIRSセミナーを終えて
池内 昭朗(株式会社 日立ハイテクノロジーズ)

今回のセミナーは「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策」をテーマとしており、2015年に博士号(工学)を取得し企業に就職した私にとって非常に身近な話題であったことから、本セミナーに参加させていただきました。

私がセミナーを通して感じたことは、「若手研究者の育成・支援の“入口”は非常に整備されてきているが、“その先”をどうするかが大きな問題である。」ということです。澤口先生が実施されたアンケートからも明らかなように、医学生の研究意欲と社会貢献への意欲は非常に高く、研究へのモチベーションは非常に高いといえます。さらに、近年では大学における留学助成も充実しつつあり、多くの学生が海外経験を積むことができます。私自身も、修士1年次に大学の支援により海外留学を経験し、その時の経験から博士課程に進学する決意をしました。かつての私のように、アカデミック界から様々な支援を受け、“研究者”をキャリアプランの選択肢に入れる学生は増加しつつあるのではないでしょうか。

しかしながら、現実には若手研究者の数は増加していません。育成・支援策は充実しつつあり、“研究者”をキャリアプランの選択肢に入れる学生は増加しているにも関わらず、なぜ若手研究者は増加しないのでしょうか。

それを明らかにする鍵は、澤口先生が実施されているような学生へのアンケートにあると私は考えています。研究者の卵である学部・修士・博士課程の学生が、研究活動を進める中で何を問題と感じ、どのような壁を感じているのかを調査し、研究職へのイメージがどのように変わっていくかを継続的にアンケート調査することで、今後の支援策のヒントが見えてくると考えています。ぜひ、継続的な調査と、修士・博士学生を含めたアンケート対象者の拡大を先生方にお願いしたいと思います。

最後に、私は本セミナーに参加し、「これほど多くの方々が若手研究者支援の為に尽力していたのか。」と、感動いたしました。ぜひ、次回の「若手研究者育成・支援」をテーマとするセミナーでは、学生を含む若手研究者にも多く参加していただき、活発な意見交換をしていただきたいと思います。きっと学生も、「若手は期待されているし、応援されているんだ。」と感じることができると思います。

私はアカデミックを離れ企業に就職しましたが、研究(問題発見・解決)への意欲、社会貢献への意欲にいまだ燃えております。今後もよりよい製品を開発し、皆様と共に世界に貢献していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

参加頂いた方からの感想

当日は、人材育成に係る興味深いお話を拝聴でき、大変充実した土曜日の午後となりました。
社会一般で競争原理と格差社会が問題視されるアベノミクス絶頂期の昨今、実は科学社会に於いても、「格差」が広がっている。

今に始まったことではないが、生命科学分野の研究では(も)、トレンドに乗ったテーマや高名なラボにいないとなかなか研究費にありつけない状況である。中でも、若手研究者は短期のポストを渡り歩くという、競争原理の産物−不安定な非正規雇用を増やしただけになった。

先日、日給 約1万円で博士研究員を募集する広告を目にした。博士号を取得するために、どのくらい時間と経費がかかるのだろう。

全て自己資金で学費を捻出した場合、博士後期課程の入学金から3年間の授業料等でざっと200万円はかかる。博士課程に進学せずに修士卒業で一般企業に就職したとしても、初任給で平均300万円。3年間働けば単純に900万円の収入が得られる。

一方、めでたく3年間で博士号を取得しても、ポスドク等の約 40%の年収は400万円以下である(日本学術会議「生命系における博士研究員(ポスドク)並びに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題」平成23年9月29日)。また半数以上が退職金や住宅手当の支給を受けられない。超過勤務は当たり前で滅私奉公。60歳を超えリタイアしたときの退職金と年金はどうなるのか。

科学技術立国たる日本の未来を明るくするには、若い世代の多くに科学へ興味を持ってもらうことが重要だが、その前に研究者ってキラキラしてかっこいい!、博士号を持っているとキャリアパスが広がる!という前向きな環境を提供するのが大事だと思った次第である。

写真集

  • 講演する澤口様

  • 講演風景

  • 商業展示風景

  • 商業展示風景

  • アカデミックサロンの司会をする澤口先生

  • 乾杯の挨拶をする和氣先生

  • 質問する日立ハイテクノロジーズ 池内様

  • 商業展示とアカデミックサロン

  • (株)日本ローパー 中島様

  • (株)日本レーザー 鎌田様

  • (株)ニコンインスティック 大場様

  • 日本電子(株)安達様

  • ライカマイクロシステムズ(株)西山様

  • (株)日立ハイテクノロジーズ 許斐様

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