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IIRS会員『大隅良典先生がノーベル生理学・医学賞』をご受賞されました。
−研究のスタートは顕微鏡で視ること−

当法人IIRSの正会員、研究協力者であられる大隅良典先生が2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞されました。先生の長年のオートファジーに関するご研究が高く評価されたことで、当会としても大変嬉しいご受賞であり、会員の皆様とともにお慶び申しあげます。

思えば2009年の元旦の朝日新聞に、大隅良典先生が朝日賞ご受賞のインタビューの掲載があり、「顕微鏡を用いて観察中に、酵母細胞の液胞の中で、激しく踊っている顆粒が沢山あることに気づきました。私の今日の研究の発端は、顕微鏡観察でした」と語っておられました。私はその記事を読み、先生に是非ご講演をと懇願いたしました。私共は、日頃より、“視ること”の必要性の普及、啓発のために、種々の学会でIIRSのイベントを開催してまいりましたが、分子生物学会での講演者を決めかねていた折で、その年の12月に開催された日本分子生物学会年会に、先生をお招きし、私は山本正幸先生(設立当初のIIRS理事)と共に、フォーラムを開始し、今日に至っております。

大隅良典先生のご研究は、光学顕微鏡から始まり、電子顕微鏡でさらに細かく解析されたことが基礎となって、その後『オートファジーの遺伝子解析』へと発展し、今日に至ったことを先生からお聞きしましたが、私は、研究には“視ること”が大切だ、と自負しております。つまり、IIRSとしては、先生が“可視化”ということが生命科学研究の基本であることを証明して下さったことで、我が意を得たりと、とても誇らしい気持ちです。

大隅良典先生も、「情報は顕微鏡のなかにある」との信念で、研究を続けて来たと話しておられました。

2000年頃のある学会で、私が「生命科学研究は構造と機能の両面から行うべきであるが、将来形態学の側面から貢献できる人が少なくなることが危惧されるので、それを支援する組織を作る必要がある」と話した時、先生がそれにご賛同下さったことを今思い出します。

私はその時にIIRSの設立構想を考え、その後2004年にそれを実現したのでした。大隅良典先生はその頃すでに基礎生物学研究所でご研究されておられたので、IIRSの理事にご就任をお願いできなかったのが残念でした。

2014年には超解像顕微鏡の開発者がノーベル賞を受賞され、光学顕微鏡は新しい発展をしております。さらに、今回の先生のノーベル賞ご受賞で、電子顕微鏡による微細形態の解明が生命科学の研究にとって、不可欠であると実証され、昨今の、ともすれば目先の結果が簡単に出る研究へと若者を駆り立てている風潮が、今回のご受賞をきっかけに、研究のあり方について、改めて考え直す機会となることを念願します。

大隅良典先生の研究、業績等については、多くに記載がありますので、先生の研究材料である酵母と、そのオートファジー現象の電顕写真を下記に掲載致します。

なお、先生のこれまでの多くのご受賞歴は、IIRSのWebsiteでもご紹介してまいりましたが、今年はさらに、ロ―ゼンスティール賞、ワイリー賞そして国際ポール・ヤンセン生物医学研究賞もご受賞されたことを申し添えます。

IIRSの活動に理念の1つである“若手研究者育成”に、大隅先生は、同様の強い信念をもっておられます。日本のサイエンスが、少なくとも電顕分野においては、世界のトップに発展していくよう、IIRSの一員としてご支援頂きたいと祈念しております。

なお、IIRSでは、2005、2006年に先生の研究の支援をさせて頂き、2006年6月10日(土)に開催されたIIRSセミナーにおいて、「細胞内リサイクル、オートファジー研究の課題」と題してご講演をいただきました。
http://www.jiirs.org/contents/news/060711_01.html

大隅良典先生には、ご自愛されまして、益々のご活躍をお祈り申し上げます。

認定NPO法人IIRS
理事長 大隅 正子
2006年IIRSセミナーで講演する大隅良典先生
2006年IIRSセミナーで講演する大隅良典先生


写真1.酵母の透過電子顕微鏡像 (過マンガン酸カリウム固定)

  • 大隅先生の研究材料である出芽酵母の生育中の姿。(文献1)
  • 炭素源を糖から酢酸塩にかえると(酵母にとっては飢餓状態)、細胞内に胞子をつくった子のうの姿。通常は2回の減数分裂をして4個の胞子ができる。(文献2)
    CW:細胞壁、N:核、M:ミトコンドリア、V:液胞

写真2. 飢餓状態におかれた、蛋白分解酵素が欠如した変異株の細胞の透過電子顕微鏡像。(急速凍結固定)

  • 細胞の中に大きい液胞(V)が認められ、その中に沢山のオートファゴソームが(→)認められる超薄切片像。(文献3)
  • 液胞(V)にオートファゴソ−ム(AP)の外膜が液胞膜と融合する瞬間をとらえ、液胞内にあるオートファジックボディ(AB)を示すフリーズレプリカ像。(文献4)
    CW:細胞壁、N:核、M:ミトコンドリア、V:液胞

写真3.オートファゴソ−ムが液胞内に取り込まれる過程を示す透過電子顕微鏡像(急速凍結固定)a→b→c(文献5)

  • オートファゴソ−ムに小胞体(→)が接触している。
  • オートファゴソ−ム(AP,→)を取り囲んでいる液胞(V)。
  • 液胞(V)に取り込まれたオートファジックボディ(AB)。
  1. Osumi M. (2012) Biological:Review. Visualization of yeast cells by electron microscopy. J. Electron Microsc.6:343-365.
  2. Sando N. Oguchi T. Nagano M. Osumi M. (1980) Morphological changes in ascospores of Saccharomyces cerevisiae during germination aerobic and anaerobic germination. J. Gen, Appl. Microbiol. 26:403-412.
  3. Takesige K, Baba M. Tsuboi S Noda T Ohsumi Y. (1992) Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutant and conditions for its induction. J Cell Biol. 119: 301-311.
  4. Baba M. Osumi M. Ohsumi Y.(1995) Analysis of the membrane structures involved in autophgy in yeast by freeze-replica method. Cell Str. Function 20:465-471.
  5. Baba M. Osumi M, Scott SV, Klinosky DJ, Ohsumi Y.(1997) Two distinct pathways for targeting proteins from the cytoplasm to the vacuole/lusosome. J. Cell Biol. 130: 1687-1695.
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