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第39回日本分子生物学会年会 MBSJ 2016 フォーラムのご報告
形から読み解く小脳回路発達・維持・再生の分子機構
Morphological basis for cerebellar circuit development, maintenance, and regeneration

2016年11月30日(水)、第39回日本分子生物学会年会において、綜合画像研究支援が企画しましたフォーラムを以下のように開催しましたので報告します。

演  者 渡辺 雅彦 北海道大学大学院医学研究科 教授
日  時 平成28年11月30日(水曜日)18:15〜19:45
会  場 横浜パシフィコ 第8会場(会議センター 3階 313+314)
オーガナイザー 大隅 正子(認定NPO法人綜合画像研究支援 理事長/日本女子大学名誉教授)
川本 進(認定NPO法人綜合画像研究支援 理事/
千葉大学真菌医学研究センター客員教授・横浜市立大学医学部医学科客員教授)

講演に先だって、大隅正子理事長より、IIRSの事業説明の後、当法人IIRSと本年度ノーベル生理学・医学賞受賞者である大隅良典先生とのご縁などについてのご紹介がありました。大隅良典先生は、IIRSの正会員、研究協力者でおられ、本フォーラムの初回(2009年)の講演者でもあり、「情報は顕微鏡のなかにある」との信念で、オートファジー研究を続けて来られたことなどを紹介されました。

フォーラム講演では渡辺雅彦北海道大学教授が、長年、精力的に取り組み、成果を上げて来られた、小脳回路発達・維持・再生の分子機構解析の研究を、多数の形態学的データを交えて紹介されました。シナプスの伝達や可塑性に関わる機能分子の発現と局在を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて分子解剖学的に追求し、また、シナプス回路の発達や機能発現における制御機構を遺伝子改変マウスモデルなどを用いた形態生物学的研究を用いて明らかにして来られたこれまでの成果を熱を込めて紹介されました。形態学的研究などを駆使して、一貫して小脳回路発達・維持・再生の分子機構解析を進め、大きな成果を上げて来られた研究を紹介された、渡辺先生の御講演は、若い研究者、関連研究者などに大きな感銘を与えました。

プログラム

18:15〜18:20 趣旨説明
大隅 正子(認定NPO法人綜合画像研究支援・日本女子大学名誉教授)
18:20〜19:20 形から読み解く小脳回路発達・維持・再生の分子機構
渡辺 雅彦(北海道大学大学院医学研究科 教授)
19:20〜19:30 総合討論とまとめ
川本 進(認定NPO法人綜合画像研究支援・千葉大学・横浜市立大学)

講演者よりの報告

北海道大学大学院医学研究科・解剖学講座教授 渡辺雅彦先生

講演を担当して

第39回分子生物学会の第1日目となる2016年11月30日に本フォーラムが開催され、私はこれまでの研究を振り返る形で「形から読み解く小脳回路発達・維持・再生の分子機構」というタイトルで講演を行ないました。講演では、入力選択的なシナプス接着分子であるGluD/Cbln、神経活動を媒介するカルシウム濃度制御系のmGluR1やP/Q型カルシウムイオンチャネル、細胞外グルタミン酸濃度調節系のGLASTに焦点を当て、これらが小脳プルキンエ細胞シナプス回路発達・維持・再生の制御機構であることを解説しました。興味深いことに、同じカテゴリーに入る別の遺伝子が大脳のシナプス回路発達を制御していることから、これらの分子機構は脳に共通する普遍的な制御システムであると考えられます。

講演に先立ち、大隅正子先生から来月ノーベル生理学・医学賞を受賞する大隅良典先生が本フォーラムの第1回目の講演者であったことや、酵母研究における電子顕微鏡を用いた初期の研究から現在に至るまでの流れも紹介され、私にとっても記憶に刻み込まれるフォーラムとなりました。

参加者から頂いた感想

新潟大学脳研究所細胞神経生物学分野教授 ア村建司先生

第39回日本分子生物学会年会 MBSJ 2016 フォーラム 「形から読み解く小脳回路発達・維持・再生の分子機構」に参加して

今年の、日本分子生物学会年会MBSJ 2016 フォーラム「形から読み解く小脳回路発達・維持・再生の分子機構」に参加しました。講演に先だって、理事長の大隅正子先生より、IIRSの事業説明と本年度ノーベル医学生理学賞の大隅先生の研究にまつわる酵母の電子顕微鏡写真の技術的な発達を解説して頂きました。研究対象を可視化するという直感的理解を高める形態学の研究方法の進歩が、様々な生命現象を理解する大きな力であることを改めて実感しました。

渡辺先生の講演では、小脳プルキンエ細胞に投射する平行繊維と登上繊維を例に、シナプス回路がどのような分子メカニズムにより、発生初期の重複が多く特異性が少ない混沌とした状態から、入力刺激に対応し的確な情報処理ができる成体での整然としたシナプス回路ができるのかを、各種分子のノックアウトマウスと種々の形態学的手法を駆使して示されました。とりわけ印象に残っているのは、膨大な数の連続切片から構築された電子顕微鏡画像から、シナプス回路発達の分子メカニズムを視覚的に示されたことです。私は、渡辺先生とは古くから共同研究を行ってきており、本講演で示されたいくつかのノックアウトマウスは私のラボで樹立したものです。したがって、話された研究のそれぞれは知識として知っていたのですが、本講演ではこれまで先生が約20年に渡り蓄積してこられたデータを駆使して、小脳回路発達と維持、さらに再生のメカニズムの分子機序を実に明快に示されました。形から分子の機能を考えるという渡辺先生の研究スタイルにより、脳機能の基礎的基盤であるシナプス構造解明という脳科学の最重要な命題を鮮やかに解かれたことに大きな感銘を覚えました。弱いシナプスの刈り込み除去と、強いシナプスの強化という、回路発達とシナプス可塑性の両者に、同じような分子機序が介在することを深く理解することができました。

このセッションは遅い時間から始まったので、それほど参加者は多くありませんでしたが演内容に対して熱心な討議がありました。このような素晴らしい講演会を多くの方、とりわけ若い学徒に聞いてもらうことはとても大切だと思いますので、開催される時間帯や広報の方法などにもう一つ工夫がされると、良いのではないかと思いました。

写真集

趣旨説明をする大隅理事長

講演される北海道大学 渡辺 雅彦 先生

オーガナイザーをつとめる大隅理事長と川本 理事

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