お知らせ
<< お知らせ一覧へ戻る

第13回 IIRSセミナー 「オートファジーに関する研究の展望」 第15回 アカデミックサロン 「生命科学の将来を築く若手研究者および研究指導者の育成に向けた課題と提言」 のご報告

2017年6月10日(土)に東京大学・武田ホール(武田先端知ビル5階)において本年度のIIRSセミナーとアカデミックサロンを以下のように開催致しましたので、ご報告致します。

日 時 2017年6月10日(土)
セミナー:15:00〜16:00
アカデミックサロン:16:00〜18:30
場 所 東大本郷キャンパス浅野地区 東京大学武田ホール(武田先端知ビル5階)

プログラム

第13回IIRSセミナー
テーマ:「オートファジーに関する研究の展望」
講演者:阪井 康能(京都大学大学院農学研究科 教授)
 
第15回アカデミックサロン
公開討論:「生命科学の将来を築く若手研究者および研究指導者の育成に向けた課題と提言」
オーガナイザー:澤口 朗(宮崎大学 教授) 安永卓生(九州工大 教授)
 
併設で、商業展示をし、新製品情報などをご覧いただきました。また、大隅良典先生のノーベル賞受賞を記念して、「祝 IIRS会員・大隅良典栄誉教授 ノーベル生理学・医学賞ご受賞−研究のスタートは、顕微鏡で視ること−」と題するパネルとストックホルムでのノーベル・レクチャーの記録展示も行いました。

主催者よりの報告

本年度のIIRSセミナーは、IIRSの正会員、研究協力者であられる大隅良典先生(東京工業大学栄誉教授)が、2016年度ノーベル生理学・医学賞を受賞されたことを祝して、「祝:IIRS会員大隅良典栄誉教授ノーベル生理学・医学賞ご受賞記念」として、阪井 康能先生(京都大学大学院農学研究科 教授)に「オートファジーに関する研究の展望」と題して御講演をいただきました。講演に先だって、理事長の大隅正子先生より、当法人IIRSと2016年度ノーベル生理学・医学賞受賞者である大隅良典先生とのご縁などについてのご紹介がありました。大隅良典先生は、IIRSの正会員、研究協力者であられ、当法人の主催により日本分子生物学会年会で毎年続けて開催して来ておりますフォーラムの初回(2009年)の講演者でもあり、「情報は顕微鏡のなかにある」との信念で、オートファジー研究を精力的に続けて来られ、2016年度ノーベル生理学・医学賞受賞につながったことなどを紹介されました。

阪井康能先生(京都大学大学院農学研究科)の講演では、まず、分解系としての「ユビキチン・プロテアソーム」系と「オートファジー」系、また、「マクロオートファジー」と「ミクロオートファジー」など、大隅良典先生の御研究を始め、オートファジー研究の歴史とオートファジー全般の解説などをされました。そして、オルガネロファジーの一つとして、阪井先生御自身が長年、展開されて来られました、細胞内オルガネラの一つ、ペルオキシソームのオートファジー(ペキソファジー)について、ご自身の研究を中心にして講演されました。

その後、アカデミックサロンとしては、昨年10月から開始した「平成28年度下期科学技術調査研究(申請代表者 安永卓生先生)」の進捗状況のご報告の場とさせていただき、澤口 朗先生(宮崎大学 教授)に司会役、座長をお願いし、安永卓生先生(九州工大 教授)に「生命科学の将来を築く若手研究者および研究指導者の育成に向けた課題と提言」と題してのご講演をいただき、更にそれに続く総合討論を進めました。(IIRS 川本 進)

参加者から頂いた感想

第13回IIRSセミナーに参加して
山田 博之(公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部主任研究員)

私はオートファジーの専門家ではありません。しかし、研究の対象である結核(症)の分野でもこの15年ほど、結核菌が感染した細胞が感染防御戦略の一つとしてオートファジーのメカニズムを利用しているという論文が数多く発表されています。

現在、日本における結核罹患率は人口10万人に対して10を少し超える程度ですが、世界全体では人口の約3分の1が感染していると推測されています。しかし、実際、生涯に発病に至るまで菌が増殖するのはその10分の1であるといわれています。残りの10分の9は体内で殺菌される、あるいは、長期間にわたり肺組織内で休眠状態のまま存在すると考えられています。

感染後、免疫力が正常な宿主では宿主細胞内で菌が殺菌されるわけですが、その殺菌に関わるメカニズムの一つはphagosome-lysosome fusionであり、もう一つがオートファジーではないかと考えられています。もともと、結核菌は前者のphagosome-lysosome fusionから免れる能力を持つため、長期間、宿主細胞内で生き続けるという定説があります。しかし、実際には感染者の9割が生涯発病しないということから考えると、その9割のうちのかなりの部分はphagosome-lysosome fusionあるいはオートファジーが正常に機能して殺菌、あるいは封じ込めに寄与していると考えられます。ただ、これら二つのメカニズムはオートファジーとヘテロファジーの違いがあり、どのように相互に調節されているのか、あるいは、マクロファージ以外の非貪食細胞では状況が違うのかを考える上で、今回の阪井先生のご講演は大変参考になりました。IIRSセミナーに感謝致します。

昨年、大隅良典先生がオートファジーの研究でノーベル賞を受賞されました。今後もこの分野はさらに発展を続けることになるでしょう。その中で、宿主と病原性微生物の戦いにおけるオートファジーの役割が解明されることを期待しています。

第13回IIRSセミナー及び第15回アカデミックサロンを拝聴して
豊岡 公徳(国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センター)

第13回IIRSセミナーでは、京大農学部の阪井康能先生のご講演「オートファジーに関する研究の展望〜酵母オルガネロファジーの分子機構と生理機能〜」を拝聴しました。以前、私は植物のオートファジー研究に携わっていたので、阪井先生のご講演を非常に心待ちにしていました。ノーベル賞の大隅良典先生が隔離膜によってバルク分解を行うマクロオートファジーの先駆者とすると、阪井先生は酵母の液胞にオルガネラを直接取り込んで分解するミクロオートファジーの先駆者です。このミクロオートファジーに興味を持っている理由は、私が学生の頃に研究していたアズキ発芽子葉の中に蓄えられたデンプン顆粒が液胞内のアミラーゼによって分解される、まさに酵母のペルオキシソームを液胞に取り込んで分解するミクロオートファジー(ペキソファジー)に非常によく似ているからです。

阪井先生らの酵母の解析から、多くのペキソファジーの変異体の多くがマクロオートファジー遺伝子(ATG)に落ち、そのうち主要なATG遺伝子の一つであるATG8は、断片化した液胞膜の融合に関わると聞き驚きました。さらに Atg4によって切断されるAtg8-C末端ペプチドも機能を持っていること、Atg8は脂質滴の融合にも関与しているとのことなど、多くの新しい知見を解説して頂きました。また、主に植物を研究している私にとって、葉の表面にあるメタノール資源性酵母が葉のペクチンを分解して細胞表面で増殖するお話は興味深かったです。 葉表面のメタノールが昼と夜で変動し、葉の上で酵母が夜間ペルオキシソームを合成し、翌朝ペキソファジーを誘導して分解を繰り返している。これが葉の上での酵母の増殖にペキソファジーが必要である理由は腑に落ちました。脂肪滴のマーカーや細胞内レドックスの可視化法など開発も進めておられ、今後のさらなる研究・開発の展開が楽しみです。

第15回アカデミックサロンでは、九州工大の安永卓生先生より「生命科学の将来を築く若手研究者および研究指導者の育成に向けた課題と提言」の中間報告がありました。剣道部の事例にコーチングとティーチングの違いを分かり易くお話ししてくださいました。私も研究に関するティーチングを受けているわけで無く、研究室の先生や先輩の後ろ姿を見ながら学んできました。私自身がコーチングも行わなければならない立場になり、ティーチングとのバランスがとても難しく感じていますので、とても安永先生のお話は勉強になりました。12月の顕微鏡学会シンポジウムでの最終報告が楽しみです。

ご講演者の皆様、そして、大隅正子先生をはじめIIRSの関係者の皆様、お忙しいところ本当にありがとうございました。

第13回 IIRSセミナー「オートファジーに関する研究の展望」に参加して
川本 進(千葉大学真菌医学研究センター客員教授・横浜市立大学医学部医学科客員教授)

第13回 IIRSセミナーに参加して、阪井康能先生(京大農学部教授)のご講演「オートファジーに関する研究の展望〜酵母オルガネロファジーの分子機構と生理機能〜」を感銘深く聴かせていただきました。筆者は、阪井先生が研究対象とされて来たメタノール資化酵母細胞内に見られるオルガネラ、ペルオキシソームを発見(当時は、その形態から、“マイクロボデイ”と呼んでいました)した研究グループに所属し直接その発見に立ち会ったものです。筆者が研究者の卵として「研究」というものを見よう見まねで始めたころ(1970年代)、私の属した研究グループ(京都大学工学部生化学教室(福井三郎教授、田中渥夫助手(現京都大学名誉教授))は、電子顕微鏡の専門家、日本女子大学生物学教室助教授、大隅正子博士(現IIRS理事長、日本女子大学名誉教授)との共同研究で、アルカン資化酵母Candida tropicalisやメタノール資化酵母において、それぞれの酵母で炭素源アルカンやメタノールで誘導的に、細胞内オルガネラ、マイクロボデイ(ペルオキシソーム)が出現することを見出し、それらのオルガネラの生化学的、形態学的解析などの研究を精力的に進めました。そして、酵母細胞からのペルオキシソームの単離に初めて成功し、その局在酵素などを詳細に検索するなどしてそれぞれ、アルカン代謝系、メタノール酸化系でのこのオルガネラの代謝上の役割などの生化学的・形態学的研究を行って考察し、多くの重要な発見を行うことができ、その酵母ペルオキシソームに関する研究は、ほぼ最初の詳細なペルオキシソーム研究となりました。

その後、他の研究グループにより、ヒトのペルオキシソーム形成異常症である、ツェルベーガー症候群など、いわゆる「ペルオキシソーム病」の患者が発見されるなど、動物・ヒトのペルオキシソーム研究へと発展しました。また、今回、阪井先生が御講演されたように、阪井先生らの研究グループを中心にして、メタノール資化酵母のペルオキシソーム研究は、その後、ペルオキシソームへのタンパク質輸送シグナルの研究、ペルオキシソーム生合成の分子機構研究、更には、選択的分解「ペキソファジー」の分子細胞生物学的研究などへと、大きく展開して行きました。更には、ペルオキシソーム内酵素の極めて強力なメタノール誘導性プロモーターを用いた異種遺伝子発現系なども市販され、メタノール酵母は、多くの異種有用タンパク質生産に広く応用される実用酵母にもなり、産業応用的な生物工学分野でも大きく発展して行きました。

私自身は、上述の、福井・田中研究室(京大)を出てからは酵母ペルオキシソーム研究から離れて行きましたが、その後も興味を持ってフォローはずっと続けていましたので、阪井先生が話された研究の内容のそれぞれは知識としてはほぼ知ってはいました。本講演では、まず、大隅良典先生のノーベル賞受賞のお仕事をはじめ、オートファジー研究全般を含めて統合的に解説され、その後、これまで阪井先生が長年に渡り蓄積してこられたデータなどを駆使して、酵母オルガネロファジーとしての、メタノール酵母「ペキソファジー」研究を中心にしてお話しされ、更に、阪井先生のグループの最新の先端的な研究の成果として、メタノール酵母の植物葉上における自然界での生存戦略のお話しなどにも及び、他のオーデイエンスとともに、私に取りましても大変、感銘を受ける講演となりました。メタノール酵母のペルオキシソームの発見に立ち会ったものとして、この分野の更なる発展を祈念いたします。

第15回 アカデミックサロンを終えて
澤口 朗(宮崎大学医学部解剖学講座 超微形態科学分野)

今回の第15回アカデミックサロンは、「生命科学の将来を築く若手研究者および研究指導者の育成に向けた課題と提言」をテーマに開催されました。会場が和やかな雰囲気に包まれたところで、新技術振興渡辺記念会・平成28年度下期科学技術調査研究の代表を務められる安永卓生先生(九州工業大学)に基調講演いただいた後、会場の皆様から率直なご意見、ご感想を伺いました。

昨年度のアカデミックサロンでは、若手研究者育成・支援策に焦点を絞り込んだ公開討論を実施いたしましたが、その中で“若手研究者を育てる「指導者の育成」”を求める意見を頂戴いたしました。そこで今年度、安永先生は異分野、特にスポーツにおける指導者育成からヒントを抽出し、研究指導者育成への活路を見いだす取り組みを進められており、その中間報告としてこれまでの成果を紹介されました。

安永先生は学生時代、剣道部に所属されていたことから、剣道における指導者育成の調査結果を分かり易く説明されましたが、中でも印象的だったことは「指導者が有する経験や技術を如何に言葉に置き換えて伝えられるかに指導力が問われる」という点でした。言われてみれば確かに、超薄切片作製において長年の経験から感覚的に行っている「面合わせ」の行程を学生に指導する際、試料の薄切面に映る影をもとに調整する要領を上手く表現できず、言葉に詰まったことが思い出されました。

この他にも近年、教授をはじめ大学教員は時間的余裕が乏しく、学生と向き合う機会が著しく減っている現状も紹介され、会場内には他人事ならず頷く様子が数多く見受けられました。「師の背中を見て育て」とは良く言われたものですが、背中を向けているうちに愛想尽かされ、振り向いたらいない・・という時代であり、まずは向き合うことから始めなくてはなりません。

引き続き安永先生を代表に調査研究が進み、今年12月に宮崎で開催される日本顕微鏡学会第60回記念シンポジウムではアカデミック・ランチョンセミナーとして、最終報告と提言が紹介される予定です。皆様には、今後の更なる展開に期待をお寄せいただければと存じます。

参加者の感想

当日参加者に行ったアンケートの中の感想では、以下のようなコメントなど頂きました。

  • “有名なこと”なのに関連遺伝子について初めて聴きました。進んでますね。
  • 基本的なところから紹介していただき大変興味深かった。
  • オートファジーの歴史的な話と現状の両方がわかって興味深かった。
  • 多方面のトピックスでとてもおもしろかったです。

なお、当日、会場にはポスターパネルとして、大隅良典先生の2016年度「ノーベル生理学・医学受賞」が決まった際にIIRSホームページに掲載された、大隅正子理事長よりの「お祝い文」や、研究当初の重要な電顕を用いた研究、また、ストックホルムでの大隅良典先生のノーベル・レクチャー(ノーベル賞受賞者記念講演)の記録などが、紹介されました。

写真集


セミナーの司会される澤口先生

講演される阪井先生

質問される川本先生

質問される豊岡先生

質問される山田先生

乾杯の音頭をとられる中村先生
美味しいお料理に舌ずつみをうつ

アカデミックサロン司会の澤口先生

講演される安永先生

IIRS活動に提言しておられる宮澤先生

コメントされる幾原先生

ライカマイクロシステムズ(株)伊藤様

日本エフイー・アイ(株)青山様

(株)日立ハイテクノロジーズ 許斐様

ニコンインスティック(株)大場様

日本電子(株)小嶋様

(株)真空デバイス 菅家様
▲ページtopへ
<< お知らせ一覧へ戻る