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公益社団法人 日本顕微鏡学会 第73回学術講演会シンポジウム S5 :「最新イメージング技術を使った植物科学の新展開」

去る5月31日に公益社団法人日本顕微鏡学会 第73回学術講演会シンポジウムが開催されました。

日 時 2017年5月31日(水) 9:00〜11:50
日本顕微鏡学会第73回学術講演会2日目)
協 賛 認定NPO法人 綜合画像研究支援
場 所 札幌コンベンションセンター(C会場:1F中ホールB)
オーガナイザー 峰雪 芳宣(兵庫県立大学大学院)、大隅 正子(綜合画像研究支援)

プログラム

31amC_S5-01 09:00〜09:05
シンポジウム趣旨説明
峰雪 芳宣 兵庫県立大学大学院 生命理学研究科
31amC_S5-02 09:05〜09:35
褐藻類の細胞質分裂についての微細構造学的解析
長里 千香子 北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター
31amC_S5-03 09:35〜10:05
Structural biology of Chlamydomonas flagella
久保 智広 山梨大学大学院、小田 賢幸 山梨大学大学院
31amC_S5-04 10:05〜10:35
多点走査共焦点ディスクによる2光子顕微鏡の時間空間解像度の向上と細胞分裂研究への応用
村田 隆 自然科学研究機構 基礎生物学研究所
31amC_S5-05 10:35〜11:05
ライブイメージングによる植物生殖過程の細胞動態の解明
永原 史織 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所、栗原 大輔 名古屋大学大学院・理、水多 陽子 JST・さきがけ、東山 哲也 名古屋大学
31amC_S5-06 11:05〜11:35
マイクロCTとSEMで拓く植物の空洞研究
峰雪 芳宣 兵庫県立大学大学院生命理学研究科、山内 大輔 兵庫県立大学大学院生命理学研究科、金子 康子 埼玉大学教育学部、唐原 一郎 富山大学大学院理工学研究部
31amC_S5-07 11:35〜11:50
総合討論

「最新イメージング技術を使った植物科学の新展開」開催報告

峰雪芳宣(兵庫県立大学大学院)

毎年恒例の日本顕微鏡学会学術講演会における認定NPO法人綜合画像研究支援が協賛するシンポジウム、今年度は植物科学に注目した話題をということで、峰雪と大隅正子理事長がオーガナイズすることになった。最新の電子顕微鏡技術を使った3Dイメージングの話題を2題、ライブイメージングの話題2題とマイクロCTの話題1題の合計5名の招待講演者による講演で、最新のイメージング技術が植物科学の新展開にどのように貢献しているかを俯瞰できるような演題構成にした。最初の演題は北大の長里千香子博士による褐藻類の細胞質分裂のお話で、動物や陸上植物とは異なる様式の細胞質分裂における細胞骨格と膜系の様子とその際に形成される細胞間連絡について電子線トモグラフィーを使った3D解析の講演であった。会場からは大きな細胞にもかかわらず上手に凍結している凍結技術に関する質問があった。2題目は山梨大の久保智広博士のクライオ電子線トモグラフィーを使ったクラミドモナスの鞭毛運動の分子機構解析のお話で、軸糸のどのチューブリンが翻訳語修飾を受けているのかが電子顕微鏡で見える時代になったことを実感させられた講演であった。この2つの講演で扱っている植物細胞は、動物細胞と同様に中心体あるいは基底小体が細胞機能に重要な働きをしているが、被子植物の細胞は中心体を持たない。基生研の村田隆博士は、中心体を持たない被子植物の紡錘体形成のしくみを調べるために、多点走査共焦点ディスクによる2光子顕微鏡で2色同時観察法を確立したという内容で、このイメージング法の時間空間解像度が現在どこまで向上し、それによってどこまで見えてきたかについてのデータが示され、この分野のライブイメージングの最先端が垣間見られた講演であった。陸上植物が中心体と鞭毛を失ったかわりに獲得したのが、精子を花粉管の中に入れて卵まで運ぶ手段である。被子植物の受精は、花粉管で運ばれた精子(精細胞)と卵だけでなく、その周りのある助細胞や中央細胞も関係した重複受精と呼ばれる独特の生殖形式で行われる。名大の永原史織博士は、植物の生殖過程を、独特のライブイメージング技術、マイクロマニプレーション技術と分子生物学的手法を組み合わせて解明してきた内容の講演で、この方法で明らかになった植物卵細胞の多精拒否機構はイメージング技術の植物発生研究における重要性を再認識させられた内容であった。植物は受精後胚発生で新しい個体が形成されるが、できた胚は一旦乾燥し、発芽できる環境になるまで乾燥種子の状態で保存される。最後の講演では、峰雪が大型放射光施設SPring-8のX線を使ったマイクロCTとSEMを使って乾燥種子が吸水して発芽する過程を観察し、今まであまり注目されていなかった細胞間に存在する空洞と乾燥種子の細胞壁の折りたたみ構造について紹介した。これら5題の最先端のお話で、細胞下のレベルから個体のレベルまで、最近のイメージング技術が植物科学の発展に多大の貢献をしていることが印象に残るシンポジウムになったと満足している。協力いただいた演者の先生方、日本顕微鏡学会第73回学術講演会および認定NPO法人綜合画像研究支援のスタッフの方々のご協力に感謝いたします。なお、日本顕微鏡学会では学会和文誌“顕微鏡”の特集(2016年12月出版)で、また、国際誌”Microscopy”の特集号(2019年2月出版予定)で植物科学とイメージングに関する特集が出版される予定である。

「最新イメージング技術を使った植物科学の新展開」での講演を終えて

長里千香子(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

この度は「褐藻類の細胞質分裂についての微細構造学的解析」と題して講演をさせていただきました。大隅正子先生、峰雪芳宣先生、関係者の皆様には貴重な機会を与えていただきましたことを深く感謝いたします。

北海道内の室蘭市在住の私としましては札幌で行われる講演会に参加することは本来であれば気軽さがあるはずですが、日本顕微鏡学会で講演をさせていただくのは福岡大会以来6年ぶりということもあり、非常に緊張しておりました。また、私の研究対象が、狭義の植物である緑色の植物とは異なる褐藻類(コンブやワカメなどが含まれます)であるので、皆さんに興味を持っていただけるか不安でもありました。しかしながら、褐藻類の細胞質分裂について急速・加圧凍結技法と電子線トモグラフィー法を組み合わせて行った観察結果について講演をさせていただいた後に、質疑応答や総合討論のお時間、またシンポジウムが終了した後も、質問やコメントをいただき、有意義な議論を行うことができました。材料にこだわらず、方法や現象について興味を持っていただけたことをとても嬉しく思い、顕微鏡学会に参加されている方々の関心の広さに感謝した場面でもありました。

シンポジウムの終了後は、他の講演者の方々とお互いの講演について再び議論を行う場を持つことができました。他の講演者の方々が紹介された最新イメージング技術とそれを用いての解析結果はとても興味深く、今後の自身の研究展開において、様々なご提案をいただけたという気がいたします。とても充実したシンポジウムでありました。今後は日本顕微鏡学会の大会に会員として参加していきたいと考えております。

「最新イメージング技術を使った植物科学の新展開」に参加して

永原 史織(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所)

今回、初めて顕微鏡学会の学術講演会に参加し、シンポジウムで講演させていただきました。今回のシンポジウムは、イメージング技術が植物分野の研究にどのように貢献しているか、最新情報を交えながら理解できる大変興味深い内容でした。私は、被子植物の生殖過程のイメージング系についてお話しさせていただきました。被子植物が陸上で繁栄した要因のひとつとして、重複受精という生殖戦略が挙げられます。植物の受精は、動物の受精に比べてイメージしにくいかもしれませんが、2つの精細胞が花粉管によって卵細胞と中央細胞のもとへと運ばれそれぞれ受精する、という実はダイナミックなイベントがたくさん行われています。共焦点レーザー顕微鏡を用いて雌しべから取り出した組織内での受精の瞬間を観察する手法や、多光子励起レーザー顕微鏡のフェムト秒パルスレーザーを用いて特定の細胞のみを破壊する手法などを開発したことにより、植物の生殖過程のダイナミックな実態が徐々に明らかになりつつあります。ただ観察するだけではなく、解析したいイベントに応じた観察手法を選択し、顕微鏡下で自由自在に操作したり、時には雌しべを丸ごと観察したり、というようにさまざまな階層に分けて解析を行うことのできる植物の生殖過程のライブイメージングのおもしろさが少しでも伝わっていれば幸いに存じます。

今回のシンポジウムでは、材料や手法、顕微鏡システムは異なるものの、ご講演者の先生方の画像データがどれも美しくて説得力があり、イメージング技術を駆使した研究の威力や重要性を改めて実感することができ、感銘を受けました。主に電子顕微鏡を用いている方が多い中、また植物研究者ではない方も大勢いらっしゃる中、私のような未熟者を受け入れ議論してくださり誠にありがとうございました。実りある大変貴重な機会をいただきましたこと、重ねて深く感謝申し上げます。

主催者からのひとこと

今年のシンポジウムは、可視化技術の伝承および若手研究者の育成が効率よく行われている植物分野の研究をご紹介する目的もあって、峰雪先生にプログラムの作成をお願いしました。演者の皆様の講演内容も面白く、植物科学分野でも顕微鏡技術が重要な貢献をしていることを、顕微鏡学会にアピールできたシンポジウムであったと、峰雪先生も満足しておられました。

5人のご講演者は、それぞれ異なる可視化技術を使ってのご研究であったこともあり、研究成果だけでなく、技術も知りたい、この講演だけは聞きたいというように、聴衆が入れ替わり立ち替わり、会場に入ってこられたのが、いつものシンポジウムと異なり印象的でした。

講演者からも「顕微鏡学会に参加して良かった点は、普段はなかなかお話しする機会のない植物研究者以外の方とでも、顕微鏡という共通点があるので、お話しさせて頂けたことです。また、企業ブースが充実していて、様々な企業の最新の技術が一堂に会している場は、とても活気があって面白かったです。」

「先生のお言葉の通り、顕微鏡学会は今回の学会の演題を見ただけでも、惹かれる内容が沢山ありました・・・・・中略。最新の顕微鏡技術について、情報収集をしていきたいなと思っていた時期でもあり、そういう点でも学会に入会するタイミングではないかという気がいたします。」などというご感想も頂き、シンポジウムを企画した目的は充分に達成できたと感じました。

(大隅正子)

写真集


前半座長の峰雪芳宣先生

北海道大学 長里千香子先生

山梨大学 久保智広先生

熱心に質問する村田先生

基礎生物学研究所 村田隆先生

熱心に質問する峰雪先生

熱心に質問する金子康子先生

名古屋大学 永原史織先生

兵庫県立大学 峰雪芳宣先生

後半座長の大隅正子理事長

総合討論で質問する鎌崎とも子先生

応答する長里先生

写真左より村田隆先生、永原史織先生、長里千香子先生、久保智広先生、峰雪芳宣先生、大隅正子理事長

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