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日本植物学会第81回大会シンポジウムのご報告
究極のオルガネラ研究

去る2017年9月8日(金)日本植物学会第81回大会シンポジウムにおいて日本植物形態学会、綜合画像研究支援の共催によるシンポジウムを開催しましたのでご報告致します。

日 時 2017年9月8日(金) 14:00〜17:30
場 所 東京理科大学 野田キャンパス(千葉県野田市)
主 催 日本植物学会
共 催 日本植物形態学会、認定NPO法人 綜合画像研究支援(NPO IIRS)
オーガナイザー 大矢 禎一(東京大学大学院)、大隅 正子(NPO IIRS、日本女子大学)

プログラム

(敬称略)

14:00 - 14:05  
はじめに
大矢 禎一 (東京大学大学院新領域創成科学研究科)
14:05 - 14:33 1pSC01
酵母のライブイメージングで膜交通のパラダイムを覆す
中野 明彦 (東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻、理化学研究所 光量子工学研究領域 生細胞超解像イメージング研究チーム)
14:33 - 15:01 1pSC02
スフィンゴ脂質長鎖塩基の代謝経路の解明
木原 章雄 (北海道大学薬学研究院生化学研究室)
15:01 - 15:29 1pSC03
Unfolded protein response〜オルガネラ異常検知メカニズム〜
木俣 行雄 (奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)
15:29 - 15:57 1pSC04
究極のオルガネラ管理機構:オートファジーによるオルガネラ破壊のメカニズム
中戸川 仁 (東京工業大学 大学院生命理工学研究科)
15:57 - 16:25 1pSC05
出芽酵母におけるミトコンドリアオートファジーの分子機構
神吉 智丈 (新潟大学医歯学総合研究科)
16:25 - 16:53 1pSC06
核を巡るtRNAのダイナミクス
吉久 徹 (兵庫県立大学 大学院生命理学研究科)
16:53- 17:20 1pSC07
酵母の細胞壁研究の魅力
大矢 禎一 (東京大学大学院新領域創成科学研究科)
総合討論

日本植物学会第81回大会シンポジウム「究極のオルガネラ研究」のご報告
大矢禎一(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)

酵母は究極のモデル細胞とも呼ばれ多くの先導的な研究が行われてきました。なかでも昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生が進められてきたオートファジーの研究に代表される出芽酵母のオルガネラ研究は、今なおインパクトある研究が盛んに行われていて、今までの常識を覆すような新しい知見が明らかになってきています。それがなぜなのかを説明するには、酵母の実験材料としての特徴を述べる必要があります。まず、酵母は実験室で扱いやすい生き物です。交配して子孫を得たり、遺伝子操作したりするのが比較的簡単です。大きさが5ミクロンほどで、光学顕微鏡、もちろん蛍光顕微鏡での観察も容易です。病原性がないという安心感もあります。二番目の特徴は研究成果が蓄積されているという点です。オーガナイザーのひとりである大隅正子先生が最初の電顕の論文を発表されたのが1962年で、それからも実に多くの論文が発表され、96年には真核生物として初めてゲノムが解読されました。現在、約6,000ある遺伝子のうちの9割は特徴が分かっていて、遺伝子破壊株も容易に入手できて、それに基づいて多くの研究がなされています。最後に高等生物の研究に応用できるという点です。単細胞と多細胞という違いはありますが、まずシンプルな酵母で研究し、次に高等動植物でも調べるというアプローチが可能です。そこで本シンポジウムでは究極のモデル細胞を意識して生体膜とオルガネラに関連して現在最先端の研究をおこなっている研究者の方々に究極のオルガネラ研究を紹介していただくことを目的に企画しました。

まず、中野明彦先生からは、長年開発に取り組んできたSCLIM(Super-resolution Confocal Live Imaging Microscopy)を使った分泌経路の動態解析の話をしていただき、教科書に載っている選別輸送のメカニズムが覆るというセンセーショナルな話を伺いました。木原章雄先生からは、スフィンゴ脂質長鎖塩基の特に分解経路に関する最近の進展についてお話しいただき、原核生物から植物まで保存されている新しい酵素の発見について話を伺いました。木俣行雄先生からは小胞体における変性タンパク質の品質管理、UPR (Unfolded protein response)の過程でIre1というRNAaseが異常を感知して反応を引き起こす詳細なメカニズムについて伺いました。中戸川仁先生と神吉智丈先生からは、それぞれ核とミトコンドリアの自食作用の発見から最新の知見について紹介していただきました。吉久徹先生からは、栄養環境の変化に応じてtRNAが核内で作られてから細胞質と核内をダイナミックに移動する様について紹介していただきました。最後に、大矢禎一が細胞壁合成チェックポイントのメカニズムの紹介をしました。

各講演では質疑応答が活発で、参加者の皆様との間で大変有意義なディスカッションができたと思います。本シンポジウムには計100人以上の参加があり、盛況のうちに終えることができました。

本シンポジウムの講演内容に関しては、日本植物形態学会が発行するPlant Morphology誌のVol. 30 (2018年5月刊行予定)において、演者の先生方にミニレビューを執筆して頂く予定ですので、ご期待ください。最後になりましたが、本シンポジウムの講演を快くお引き受けくださいました先生方に深く感謝いたします。

日本植物学会第81回大会シンポジウム「究極のオルガネラ研究」に参加して
吉久 徹(兵庫県立大学大学院生命理学研究科)

私は理学部植物学教室の出身だが、長年酵母を主とした微生物を研究材料としてきたため、今回は研究者として職を得た後に初めて参加した日本植物学会大会であった。昨年ノーベル賞を受賞された大隅良典先生の植物学会へのご貢献に対して学会大賞が贈られるのを機に酵母のオルガネラ研究者のシンポジウムを植物学会で開こうと、大隅正子(認定NPO法人総合画像研究支援[IIRS])、大矢禎一(東大)両先生が企画された「究極のオルガネラ研究」というシンポジウムでの発表が参加の理由である。本シンポジウムは、大隅正子先生が束ねられているIIRSおよび日本植物形態学会が共催ということでもあり、植物学や形態学とは少し離れたRNA研究をやっている私には一種「他流試合で相手道場に乗り込む」の感覚すらあった。しかし、来てみると他のシンポジストの方々が、大学院時代にお世話になった先生方から助手時代に大学院生だった研究者などと知り合いばかりなので、初めの顔合わせ時点でもはや「アウェー感」の薄い会となった。シンポジウムは、中野明彦先生(東大)の高度な光学顕微鏡システムを用いたライブイメージングによるオルガネラ間の膜交通メカニズムに関するご発表を皮切りに、見ることの面白さ、見ることがメカニズムの理解に直結することを基に、様々なオルガネラやその機能・動態が取り上げられた。膜交通システムに引き続き、北大の木原章雄先生によるスフィンゴ脂質代謝における小胞体の関わる過程の発見、奈良先端大の木俣行雄先生による小胞体内のタンパク質フォルディング異常の検知システムの新機能の紹介といった小胞体を巡る研究成果が報告された。次に、話題はオートファジーによるオルガネラ品質管理に移った。大隅良典先生のもとから独立された東工大の中戸川仁先生は小胞体や核の異常を検出してその部分を特異的に排除するシステムについて、新潟大の神吉智丈先生は異常ミトコンドリアの認識とその排除について最新研究を紹介された。私は、自身の中心テーマであるtRNAの核-細胞質間ダイナミクスに関して主に核内への輸送について報告した。最後はオーガナイザーである東大の大矢先生が酵母の細胞壁合成状態の監視とそれに基づいた増殖制御機構に関する成果を発表され、その中で同じく細胞壁を有する酵母と植物の相違点・相似点を活かした植物研究への展開でシンポジウムが締めくくられた。いずれも、細胞生物学(顕微鏡レベルでの形態解析)、分子遺伝学、生化学を縦横無尽に駆使しての酵母らしい研究で、活発な議論も行われた。オルガネラ関係で絞られたとはいえ、これだけ広範な分野の研究者が集まる機会は少なく、各分野での第一線の研究が議論の俎上に上ったことは、私としても知的刺激にあふれる機会だった。個人的には植物研究者に酵母という材料がどう映るか心配であり、どれ程の方が興味を持たれるか危惧したが、実際は多数の聴衆に恵まれた。勿論、大隅先生のノーベル賞がきっかけではあろうが、酵母における研究成果を植物の研究者に問うことが新鮮な刺激になったとすれば、シンポジストの一人として喜ばしい限りである。こうした楽しい「他流試合」を企画してくださった大隅、大矢両先生と、植物学会の聴衆に方々に、一シンポジストとして心からお礼を申し上げて拙文を終わりたい。

日本植物学会 第81回大会「究極のオルガネラ研究」を聴講して
鮫島正純(IIRS会員)

今回のシンポジウムは、酵母細胞を用いて先駆的に進展しているオルガネラ研究の現況が紹介されたもので、プログラムを一見するとすぐ感じるように、昨年の大隅良典先生のノーベル賞受賞を契機としたものです。膜系オルガネラや細胞壁の形成と機能を、それらに関わる遺伝子(カスケード)やライブイメージングを解析したものでした。その中でtRNA核内輸送の研究は、私にとって“昔々を思い出させる”ものでした。

1970年前半、北大理学部博士課程に在学していた私は、実家が練馬区であったことの利便性から、築地にある国立がんセンター研究所生物学部の井沢三生研究室長の元に内地留学しておりました。当時の所長は中原和郎先生、生化学部長が杉村隆先生でした。生物学部長の西村暹先生は、遺伝子暗号解明でノーベル賞を受賞されたコラナ博士の研究室からがんセンター研究所に移られてまもなくの頃で、当時の先駆的研究であるtRNAの化学修飾の解明を活発に展開されていました。その研究内容は、“生物屋”の私にとっては全く異次元の世界でしたが、一方で、西村研究室の方々の世界を相手にした研究姿勢から影響を受けたようです。学位取得後、私は電子顕微鏡をツールとした細胞骨格の研究を展開しましたが、それなりに世界に発信することができるようになったのは、そのおかげと感じています。さらに付け加えると、その研究は東京都臨床医学総合研究所(現東京都医学総合研究所)で開始したのですが、臨床研には、がんセンター研究所におられたスタッフがかなり移られており、私と面識のある方が多数おられました。そのことも、研究のしやすさにつながりました。今回久々にtRNAの研究に接し、私の研究歴初期の“栄養源”となった国立がんセンター研究所を懐かしく思い出すとともに改めて深謝いたします。

40数年前、tRNA研究のトピックスは、化学修飾を含めた構造解析でした。その後、遺伝子操作技法が確立し、分子・オルガネラの可視化技術が進展して核膜構造が明らかにされ、今日の話題の一つであるtRNA輸送の研究へと展開してきました。基礎研究の息の長さを改めて痛感した次第です。

総括
大隅正子(IIRS会員)

中野・大矢両先生以外の5人の講演者は、植物学会会員であられない先生方をお迎えしたので、植物学会が主催する特別なシンポジウムのような感があり、面映く思いながら開催に臨みました。しかし、大勢の参加者があり、また植物学会会長の朽津先生もご出席くださり、よく噛み合った、活発な討論がなされ、成功裏に会が終わった事を本当に嬉しく思いました。オルガネラに課題を絞った酵母研究のシンポジウムは、酵母関連の会でもこれまで見られなかったものであり、大変意義深く、大隅良典先生ノーベル賞のご受賞をお祝いするシンポジウムとなりましたことは、IIRSにとりまして、記念すべきものとなりました。

集合写真

左より、木原 章雄 先生、神吉 智丈 先生、中戸川 仁 先生、大矢 禎一 オーガナイザー
木俣 行雄 先生、中野 明彦 先生、吉久 徹 先生、大隅 正子 オーガナイザー

  • はじめの挨拶をされる大矢 禎一 オーガナイザー
    はじめの挨拶をされる大矢 禎一 オーガナイザー
  • 中野 明彦 先生
    中野 明彦 先生
  • 木原 章雄 先生
    木原 章雄 先生
  • 木俣 行雄 先生
    木俣 行雄 先生
  • 中戸川 仁 先生
    中戸川 仁 先生
  • 神吉 智丈 先生
    神吉 智丈 先生
  • 吉久 徹 先生
    吉久 徹 先生
  • 大矢 禎一 先生
    大矢 禎一 先生
  • 質問をされる吉久  徹 先生
    質問をされる吉久 徹 先生
  • 答える大矢 禎一 先生
    答える大矢 禎一 先生
  • 質問をされる大会会長 朽津 和幸 先生
    質問をされる大会会長 朽津 和幸 先生
  • おわりの挨拶をされる中野 明彦 先生
    おわりの挨拶をされる中野 明彦 先生
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