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第14回IIRS セミナー 第16回アカデミックサロンのご報告

2018年6月9日(土)に東京大学・武田ホール(武田先端知ビル5階)において本年度のIIRSセミナーとアカデミックサロンを以下のように開催致しましたので、ご報告致します。

日 時 2018 年6月9日(土)
セミナー:15:00〜16:00
アカデミックサロン:16:00〜18:30
場 所 東大本郷キャンパス浅野地区 東京大学武田ホール(武田先端知ビル5 階)

プログラム

第14回 IIRSセミナー
テーマ:「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」
講演者:吉川 雅英(東京大学医学部医学研究科 教授)
 
第16回アカデミックサロン
テーマ:「iPS 細胞再生臓器品質評価に資する電顕解析の現況と将来展望」
オーガナイザー:澤口 朗(宮崎大学医学部教授)
 
アカデミックサロン会場に併設される商業展示会場では、新製品情報などをご覧いただけきました。

主催者よりの報告

第14回IIRSセミナーおよび第17回アカデミックサロンに思うこと
安永 卓生(九州工業大学大学院情報工学研究院・IIRS 理事)

IIRSの総会後に、IIRS会員自身、そして、広く研究者、技術者、学生、大学院生、大学卒業生及び他分野で関心のある方々を対象として、第14 回IIRSセミナーを開催しました。その後、第17回アカデミックサロン(企業展示併設公開討論)、特に、アカデミアだけではなく、メーカー企業、そして、ユーザー企業のエンジニア、営業の方々が一同に介し、多様な意見交換の時間をもつことができました。ご講演に頂きました、吉川雅英先生(東京大学・大学院医学系研究科・教授)、また、澤口朗先生(宮崎大学・医学部・教授)には深謝いたしますと共に、ご参加頂いた皆様のご厚情に御礼申し上げます。加えて、今回は、特に,IIRSが実施する調査研究をご支援頂いている財団法人新技術振興渡辺記念会より、佐藤征夫常勤理事にもご参加頂き,当会の活動状況をご高覧、御挨拶頂き、今後のIIRSの活動への期待を述べて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

吉川先生は、「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」と題して,ノーベル化学賞となったクライオ電子顕微鏡の日本の課題と現在,それに対して、環境改善を目指したBINDS(創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム)の取り組みをお話しされました。当会のCUMNET にもご協力頂いていますが、日本の多様なプラットフォーム事業とそのネットワークの在り方を改めて考える良い機会となりました。
澤口先生には,上述した渡辺記念会の調査事業に関連して,「iPS細胞再生臓器品質評価に資する電顕解析の現況と将来展望」と題して、中間報告を実施して頂きました。アプリケーション指向としての画像研究支援・将来を見通した画像支援の企画・設計の必要性がみえてきました。

IIRSと致しましては、「画像」の取得、解析,解釈といったキーワードを柱にしつつも、今後も継続的にこういった話題の提供、交流活動,調査研究などを実施し、それらを通して多様な分野の連結によるイノベーションの創出の支援へと繋がることを目指したいと考えています。皆様からの忌憚のないご意見を頂き、邁進致す所存です。なにとぞ、今後とも宜しくお願いします。

第14回IIRSセミナーと第17回アカデミックサロンに参加して
光岡 薫(大阪大学超高圧電子顕微鏡センター・IIRS 会員)

第14回IIRSセミナーで、東京大学大学院医学系研究科教授の吉川先生が、「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」というテーマで講演されました。その講演の司会主催者よりの報告をさせていただき、話を間近で聴く機会がありました。その講演では、吉川先生が関わられた最近の3つの研究成果を報告するとともに、先生が参加している創薬等先端技術支援基盤プラットフォームBINDS で設置された最新のクライオ電子顕微鏡設備の状況について話をされました。最近の3 つの研究成果については、一つはクライオ単粒子電子顕微鏡法を用いた膜タンパク質チャネルの構造解析結果で、私の研究内容とも近く参考になりました。また、もう一つの成果は、負染色電子顕微鏡像からのIgMの構造解析結果で、電子顕微鏡を用いた構造研究に最近の画像解析技術を応用することで、まだまだ明らかになることが多いと感じることができました。そして、三つ目の成果は、以前から吉川先生が取り組まれている分子遺伝学と電子顕微鏡学を応用した構造研究で、CRISPER-Cas9などの技術の一般化とともに、その分野もさらなる発展が期待できると思われます。

このような研究成果以外に、東京大学に設置された最新のクライオ電子顕微鏡設備や支援基盤プラットフォームの簡単な紹介もありました。その中で、負染色電子顕微鏡観察の利用に関する話題が出てきました。最近、私が関係しているナノテクノロジープラットフォームの利用者からの話などから、生体高分子の電子顕微鏡観察の基礎である負染色も、最近は多くの大学で利用しにくくなってきていると感じています。医学生物学系で電子顕微鏡を保有している大学が少なくなっているように思いますし、また、酢酸ウランなども利用しにくくなっていると聞いています。このような状況で、IIRSが取り組んでいるCUMNETなどの活動は、今後、さらに重要になると思われます。

さらに第17回アカデミックサロンは、「iPS細胞再生臓器品質評価に資する電顕解析の現況と将来展望」というテーマで、宮崎大学医学部教授の澤口先生がオーガナイズされていました。その中で、電子顕微鏡の利用への障壁をなるべく下げること、また、試料調製の迅速化などの重要性を再確認しました。これは、新技術振興渡辺記念会の助成を受けてIIRSが取り組んでいる調査研究を基にしており、今後もこのような調査研究も続けて、日本での電子顕微鏡学のさらなる発展につながることを期待しています。

第17回アカデミックサロンを終えて
澤口 朗(宮崎大学医学部解剖学講座 超微形態科学分野)

今回の第17回アカデミックサロンは、「iPS細胞再生臓器品質評価に資する電顕解析の現況と将来展望」」をテーマに開催されました。本テーマは新技術振興渡辺記念会・平成29年度下期科学技術調査研究課題に基づくもので、冒頭、研究代表者の澤口からこれまでの経過について中間報告がなされました。その中で、5月30日に開催された日本顕微鏡学会学術講演会(久留米)IIRS冠ワークショップで実施されたアンケート結果が紹介され、iPS細胞から分化・誘導された再生臓器の形態学的品質評価に電子顕微鏡が「必要」と考える回答が多い一方で、電子顕微鏡解析には超薄切片作製や画像読影をはじめとする「障壁」が存在するとの懸念を抱く回答も複数寄せられました。IIRSの設立趣旨にも明記されている電顕解析の「技術支援」や「人材育成」を通じて、再生医療研究と臨床応用の推進に貢献を果たせるよう、参加者の間では未来志向の活発な意見交換がなされました。また、歓談の合間には今回はじめてご参加いただいた新技術振興渡辺記念会・佐藤征夫理事から、IIRSが注力してきた調査研究の取り組みと今後の更なる展開に大きな期待が寄せられ、関係者一同、大いに励まされました。

今回のアカデミックサロンは例年以上に「アカデミック」な雰囲気に包まれながら、機器展示で出展いただいた各企業担当者のユニークなPRタイムを含め、たいへん有意義なひとときとなりました。本調査研究は引き続き9月30日まで実施され、今秋の第12回可視化技術ワークショップに続く第18回アカデミックサロンで最終報告と提言をご紹介する予定でおりますので、皆様のご期待をお寄せいただければと存じます。

参加者から頂いた感想

アーティファクト
天児 和暢(九州大学医学研究院名誉教授)

アーティファクト(artifact)とは、辞書によると人工物、工芸品、作為、不自然な結果等の意味が書かれている。科学の世界でこの言葉が注目されるようになったのは、電子顕微鏡での観察であろう。昭和35年頃から電子顕微鏡観察に携わってきた私が、しばしば言われたのがアーティファクトに気をつけろという言葉であった。今顧みると、当時の電顕で得られた細菌の構造は、このアーティファクトに満ちていたといえる。メソゾームと呼ばれた細胞内の構造、核膜の無い核構造、分泌機能を持つとされたグラム陰性菌のBayer Junction と呼ばれた構造等で、その構造の機能性の説明に苦労した時代であった。しかし固定方法が進歩するにつれ、これらの構造物の多くが試料作成時に生じた人工産物である事が明らかになり、細菌微細構造の自然な形が明らかになったきた。これは電顕の応用技術の進歩による成果である。電子顕微鏡自体の性能向上、それに対する応用技術の開発により新たな構造解析が可能になっているが、それらにより得られた構造が真実の構造なのか、その判定には慎重な判断が必要であろう。前述のBayer Junction 構造は長年分泌機能構造物として教科書にも記載されてきたが、凍結固定法によりその存在が否定され、観察者のBayer 自身が、新たな固定法でその存在を否定したKellenberger との共著で、間違いである事を報告する論文を書き、細菌分泌機構は新たな研究テーマとして再浮上してきた。視覚に訴える研究データは信頼されやすいので、新たに開発された技術での映像を最初に見た研究者は、まずはその信憑性を慎重に判断する事が求められる。観察した構造物が人工物ではないだろうか?という疑念を常に持つことである。

第14回IIRSセミナーに参加して
山口正視(千葉大学・真菌医学研究センター)

今回のIIRSセミナーは、東京大学の吉川雅英先生が、「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」と題して講演されました。大変にわかりやすく、また最先端の成果をも織り交ぜて、初心者にも、現在この分野で活躍されている方々にも、大いに満足のいくすばらしい講演でした。

私は、1984年にNatureに発表された”Cryo-electron microscopy of viruses”を読んで、「これぞ水を含んだままのアーティファクトのない真の生物試料を見る画期的な方法」と感じて、私自身、クライオ電子顕微鏡に関わってきました。そして、2008年に、永山國昭先生、ラド・ダネブ博士の協力を得て、インフルエンザウイルスのクライオ電子顕微鏡撮影に成功し、ほんの少し、この分野に貢献できたかと思っております。

吉川先生のお話は、タンパク質分子の原子レベルの構造解析が、X線解析、NMRから、クライオ電子顕微鏡による解析に移ってきていること、日本での研究は、欧米に比べて立ち遅れているということでした。この遅れの原因のひとつは、クライオ電子顕微鏡の台数が少ないこと、研究者が少ないことを挙げていらっしゃいました。この度、吉川先生の施設に、数億円もするクライオ電子顕微鏡をはじめ、4台もの電子顕微鏡が設置されたとのこと、驚くと同時に、これからの活躍を期待いたします。さらに嬉しいことに、この4月から、この分野のトップの研究者の一人、ラド・ダネブ博士を招聘されたとのことで、さらに期待が高まります。

ただ、一つ残念なのは、高額な電子顕微鏡も周辺機器も、最近は外国製であることで、日本のメーカーには、ぜひ、がんばってほしいものです(微力ながら、私自身も、高価な高圧凍結装置にとって変わる安価な急速凍結装置の製作・販売に関わって、日本を盛り上げたいと願っています)。

「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」のセミナーを聴講して
東美貴子(国立研究開発法人科学技術振興機構)

2017年ノーベル化学賞に輝いたクライオ電子顕微鏡。タンパク質構造データバンク(PDB)に登録された原子モデル数の登録データ数の推移をみると、X線結晶解析法に続きNMR法が主流だったタンパク質等の生体高分子の構造解析手法について、2010年前後を境に電子顕微鏡による構造解析が存在感を増しつつある。今回のセミナーでは、近年、構造解析分野で存在感を増しつつあるクライオ電子顕微鏡の技術情報、世界の状況および解析事例等について、吉川教授よりわかりやすく紹介いただいた。

クライオ電子顕微鏡で得られた2次元撮像を、コンピュータ上で3次元構築するためには、ソフトウェアの向上が必須であり、解析サイズにより、大きく単粒子解析、トモグラフィーや2D crystalという手法があげられる。S/N比を下げるクライオ電子顕微鏡の解析精度向上には、前述のソフトウェアやカメラ(位相板の開発等)等の技術開発が基盤となっている。吉川研究室には、AMED BINDSの支援によりTitan KriosやTalos Arctica等のクライオ電子顕微鏡群が導入されるとともに、永山國昭研究室やMax Planck研究所等で長く位相板の開発を行っていたRadostin Danev博士が着任したことで、弁慶に長刀のごとく、益々精力的に研究を進められていることが伺われた。最近では、クライオ電子顕微鏡での新たな生体高分子解析の開拓ともいうべき共同研究を始めたことで、チャネルタンパク質LRRC8A(元々X線で解析を行っていた)、血中タンパク質AIMや免疫ゼブラフィッシュの鞭毛(軸糸ダイニン)等の構造が解明されつつある事例について紹介をいただいた。

このような高性能のクライオ電子顕微鏡を使った研究は世界各国で活発化しているが、導入機器数の世界的な分布をみると、EU38台、米国33台、中国9台、日本4台、カナダ2台、シンガポール・アラブ・オーストラリア各1台という状況である。EMDB登録数で日本は第6位とやや出遅れ感が否めないが、大型施設の共用利用制度が浸透し、クライオ電子顕微鏡によるタンパク質等の生体高分子の解析がより身近になっていくことで、一気に世界地図を塗り替えられるのではという期待感に包まれた。

第14回IIRSセミナーに参加して
和田圭司(国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長、日本神経化学会理事長)

この度大隅正子先生のお誘いを受けまして初めてIIRSセミナーに参加をいたしました。今回のテーマは「日本におけるクライオ電顕の現状と課題」でご講演者は東京大学教授の吉川雅英先生でした。

クライオ電顕につきましては従来関心がありましたが、まとまったお話を伺うのは今回が初めてでした。わかりやすいお話で、門外漢の私でもクライオ電顕の素晴らしさとその奥の深さについて学び取ることが出来ました。また、日本がその導入において立ち後れていることを知り、いろいろと考えさせられるお話しでもありました。機器の導入が行われても、有効活用に至るには研究者だけでなく、維持管理あるいは試料準備、さらにはデータ解析に至る様々な職種の人の関わりが必須であることを痛感いたしました。特に日本は、このような研究補助と申しましょうか、サポート人材の育成、確保については体制的に遅れているという印象があります。クライオ電顕を使用すれば間違いなく良いデータが取れると言うことが分かっていながら導入台数が少なすぎるというジレンマ、サポートを含め周辺部分が予算化されないと諸外国の後塵を拝することになるというジレンマ、いずれも日本が抱える構造的な欠陥がクライオ電顕の世界にも現れていると言うことがよく分かりました。それでも、クライオ電顕を通した科学の未来を感じ取ることが出来ました。伺えば、国産メーカーもシェアが低いながらも頑張っているとのこと。日本の電子顕微鏡分野の益々の発展を願わずにはいられません。

IIRSセミナーのあとはアカデミックサロンと称して宮崎大学教授の澤口朗先生のお話がありました。分子生物学の勃興でひとたび片隅に追いやられた格好の電顕が、今や必須のものとして蘇っている。分子生物学ですらますます電顕を必要としているという趣旨のお話しは大変感動的でありました。

大隅先生には先日の猿橋賞の表彰式で初めてお目にかかりました。仕事柄、大隅先生のご息女の典子先生とはお付き合いがございますがご母堂の正子先生ともご縁が出来、また今回のセミナーにお誘い頂きましたことを心より喜んでおります。ありがとうございました。

第14回IIRSセミナーならびに第17回アカデミックサロンに参加して
佐藤繭子(国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センター)

2018年6月9日、東京大学武田ホールにて開催された第14回IIRSセミナーと第17回アカデミックサロンに参加いたしました。IIRSセミナーは東京大学の吉川雅英先生による「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」という演題でのご講演でした。はじめに、構造生物学ではクライオ電顕がadvantageからmustになりつつあるとのお言葉があり、近年の論文数の増加や動向を考えますと、思わずうなずいてしまいました。また従来の電顕法ではいくら拡大しても生体元素そのものは見えず、染色により生体元素に付随した重金属が見えているのに対し、クライオ電顕ではタンパク質そのものを無染色で見ることができるというご説明では、クライオ電顕の手法としての魅力を改めて感じました。クライオ電顕を用いた単粒子解析やトモグラフィー、micro-electron diffraction (MicroED) などの各種解析法についてのお話の後、クライオ電顕の技術的ブレイクスルーについての話題では、Direct electron detectorや新しい位相板の開発など条件が揃ったことで、分野が急速に発展を遂げている様子がよく分かりました。

続いて日本国内でのクライオ電顕のネットワーク、創薬等先端技術支援基盤プラットフォームのご紹介がありました。実際の支援例として、今年報告されたばかりの研究のお話をお聞きすることができましたが、成長が著しく競争の激しい分野であることが実感できました。また東京大学の施設のご紹介では、高性能のクライオ電顕はもちろんのこと、サンプルを凍結したままFIB-SEMで削って薄膜化し、TEMで観察できる新しい技術など、期待の広がるお話が続きました。私は従来法のクライオではない電顕解析を専門としており、クライオ電顕は近いようで遠い世界でありますが、吉川先生のご講演は大変分かりやすく、クライオ電顕の現状と課題についてよく理解することができました。今まさに発展しつつあるクライオ電顕分野の勢いを、目の当たりにできたように思います。

続いて会場をホールからホワイエに移し、後半のアカデミックサロンが始まりました。これまでIIRSセミナーは何度か拝聴させていただいておりましたが、アカデミックサロンまで通して参加させていただくのは今回が初めてのことでした。和やかな雰囲気の中、宮崎大学の澤口朗先生による「iPS細胞再生臓器品質評価に資する電顕解析の現況と将来展望」についてお話を伺いました。自分はどちらかといえば基礎科学の研究支援に携わることがほとんどで、普段こういった医療分野での応用のお話をお聞きする機会は少ないため、実用化に向けての着実な研究の展開の仕方に学ぶところが多くありました。またアカデミックサロンでは、会場に電顕関連の企業展示もされており、電顕解析でお世話になっている企業の方々が一堂に会されていました。新製品のお話を伺ったり、日頃の解析における疑問や問題の相談などをしているうちに、あっという間に時間が過ぎ、終了の時間を迎えました。

短い時間ではありましたが、非常に密度が濃く、得るところの多い1日となりました。私事ではありますが、ここ数年は育児もあり、長期に渡って遠方の学会等に参加することが難しくなっていました。この日のセミナー・アカデミックサロンでは、今注目される重要な研究トピックについてのご講演を拝聴できただけではなく、技術についての相談や、電顕でお世話になっている先生方に久し振りにお会いする貴重な機会を一度にいただくことができ、本当に有り難く思いました。このような場を設けて下さいました大隅正子先生をはじめIIRSの先生方、ご講演の先生方、またスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。

第14回IIRSセミナーに参加して
横尾岳彦(産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門)

第14回IIRSセミナー「日本におけるクライオ電子顕微鏡の現状と課題」に参加させていただきました。2017年のノーベル化学賞がクライオ電子顕微鏡の開発に対して授与されたことは知っておりましたが、「クライオ電子顕微鏡」については、まったく知識がなかったため、知っておきたいと思ったからです。演者の吉川先生が、ご講演の最初の方で、「この会場ではクライオ電顕の専門家と全く知らない人とに二極分化していて……」とおっしゃっていましたが、私はまさに後者に該当する者です。しかし、吉川先生のご講演は、二極分化している聴衆のどちらも惹きつける内容でした。直接電子検出器の開発や、計算機による大量の画像処理が、「視ること」の高精細化をここまで達成できることには、驚きを禁じ得ません。得られたタンパク質複合体像の美しさに圧倒されました(顕微鏡の価格にも圧倒されました)。きわめて魅力的なセミナーを、どうもありがとうございました。

IIRSセミナーで吉川さんの講演を拝聴しての感想
青山一弘(サーモンフィッシャーサイエンティフィック)

東京大学医学部の吉川教授に最近のCryoで電子顕微鏡に関しての状況、および最新の結果についての講演をいただいた。私自身もかかわっている分野であるので、この講演自体というよりも最近のCryo顕微鏡の状況に関して今感じていることを吉川さんにも質問してみた。質問というより危機感というか使命感みたいなものが共有されていることを確認しただけという感じではあるが。

私が感じている危機感というものはこの分野があまりに急激に注目を集めたことである。雑誌などにCryo顕微鏡関係の特集が数多く組まれ、学会でのCryoのセッション、特別講演などが急激に増えた。今年に入って数台の新規のCryo顕微鏡が導入され、また従来からの装置も数台稼働しているが、これらでデータを撮ってみたいと思う人が導入された顕微鏡の数以上に大幅に増えた。そして新しく興味を持たれた方の期待値がたぶん過剰に高い。まあ、どの分野でも「隣の芝生は・・・・・」であるから当然のことではある。で私の感じている危機感とか使命感みたいなものは、この過剰に盛り上がった周囲の期待を如何に満足させていけばいいのか?なるべく失望させないようにしたい!!ということであり、たぶん今年大きな予算を得て装置を導入された吉川さんにおいては、私などの比ではなくこのプレッシャーが掛かっていることが容易に推察できるので、聞いてみたいと思った。まあ、明確な答えは現状ないことはわかっている。

この分野にかかわっている人間はいま全員が正念場であって、運命共同体みたいなところがある。その先頭のひとりが吉川さんであるし、私はそのサポートをする立場でもあるので、頑張っていきましょう!!!

第14回IIRSセミナーに参加して
山本真義(カールツァイス株式会社電子顕微鏡アプリケーション担当)
山口隼司(カールツァイス株式会社アカデミア営業担当)

平素より大変お世話になっております。カールツァイス株式会社でライフサイエンス分野における電子顕微鏡のアプリケーションを担当しております山口隼司です。この度は、第14回IIRSセミナー、および第17回アカデミックサロンにお招き頂き心より感謝申し上げます。当日は、同じく営業を担当しております山本真義と共に出席させて頂き、吉川教授(東京大学大学院医学研究科)と澤口教授(宮崎大学医学部)のご講演を拝聴させて頂きました。クライオ電子顕微鏡を用いて行われた、膜たんぱく質LRRCBの構造解析やゼブラフィッシュの繊毛異常など非常に興味深いお話ばかりで、他電子顕微鏡メーカーに先立って透過電子顕微鏡の販売を取りやめた私共としては大変勉強になる内容でした。近年、顕微鏡技術は日に日に進化しており、これまで得られなかった情報をより短時間に簡便に、かつ正確に取得出来る様になってきました。今回ご紹介いただいたIgM構造の新規モデルは大変に印象的なお話で、顕微鏡技術の進化が新たな発見に直結する可能性を示されていたように感じました。私共もそのような最先端技術を提供し、科学の発展に貢献できる企業であるよう一層努めていきたい所存でございます。

カールツァイス株式会社は、上述の通り現在、透過電子顕微鏡は扱っておりませんが、走査電子顕微鏡を用いた三次元電子顕微鏡解析法や光・電子相関法など新しい電子顕微鏡技術に加え、光学顕微鏡やX線顕微鏡など幅広い商品を取り扱っております。こういった製品群の新規ご紹介の場は私どもも模索、検討しております。今回のご参加させていただいた内容につきましては、広告、ブース展示等を管理するマーケティング部署にも報告しております。近年、マーケティング費用は効率化を求められ、大きな学会にフォーカスしたプロモーション、セミナー開催、ブース展示をさせていただいております。私どもも、今回のように先鋭的なご研究の会で、情報を得るのみでなく、情報を発信できる存在であるように努めたいと考えております。ただし、予算等に関しては他の学会等とのバランスとも調整のうえ検討をしておりますため、今後のご検討とさせてください。

私どもは国内のみでなく海外にも多くの顕微鏡スペシャリストが在籍しております。私共に先生方のお役に立てる機会がありましたら、いつでもお声掛けいただきたく存じます。この度はこのような会にお招き頂き、先生方のお話を伺えたこと深くお礼申し上げます。また今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

第14回IIRSセミナーに参加して
橋本達也(仁木工芸株式会社 技術部・株式会社 REI-TEC)

体調の事もあり後半のアカデミックサロンには後ろ髪をひかれながら失礼させていただきました。15時からの吉川先生のお話し大変興味深く拝聴いたしました、クライオ電顕の現状はよく理解できました。全体を通して言われていることは、日本においては各研究者が単一では必要な機器等手当てすることは非常に困難であること、世界規模グローバルに協力が必要と感じました。そこで大隅先生が立ち上げられたIIRSの存在意味がいまさらながら必要であることが痛感させられました。先生のIIRS立ち上げの先見性がいまさらですがわかった思いです。その意味を小さく誤解していたことを恥ずかしく思いました。先生まだまだお元気ですので益々のご活躍を祈念いたしましてわたくしの感想とさせていただきます。

クライオ電子顕微鏡技術で思うこと
伊藤喜子(ライカマイクロシステムズ株式会社)

クライオ電子顕微鏡法は、難易度の高い電子顕微鏡法のひとつとされ、苦労が付き物の技術でした。若かりし頃にクライオ電子顕微鏡を習ったときは、手作り装置での手技凍結による氷包埋法、今や入手すら困難となった高感度フィルムを扱い、電子顕微鏡を冷却し、サイドエントリーのクライオトランスファーホルダーで試料を挿入し、どこに居るのか良くわからない試料を、電子線ダメージを抑えながら撮影をして、現像。霜のコンタミネーションや氷晶ダメージなど、様々な問題やこの長いプロセスクリアし、最後に暗いネガにボンヤリ映るウィルスや蛋白質の結晶のパターンを見つけたときは、感動したのを覚えています。そして、試料作製技術、クライオ電子顕微鏡の自動化、さらには、画像検出器の飛躍的な向上と、三位一体のたゆまぬ努力が行われ、昨年の、ノーベル化学賞で私にとってクライオ電子顕微鏡のヒーローであった先生方がお名前連なり単粒子解析法が受賞となったことで、この技術が、蛋白質の構造解析の重要な手法として次のステージにあがったことを社会に強く印象付け認知されることになり本当に感慨深い気持ちになりました。

次の未来では、光学顕微鏡で当たり前に観察・解析されている機能状態の細胞の動態を電子顕微鏡で高分解能解析し、細胞内で生き生きと働いている機能状態の蛋白質の構造解析に繋げることです。これは、クライオ電子顕微鏡技術を駆使してアプローチすることが最も早道であり、また、光学顕微鏡と電子顕微鏡の世界を繋げる架け橋となって、生命現象の事実を新たな視点で可視化し、社会に貢献する技術を創生する鍵となると確信しています。今回の吉川先生のご講演で、日本にもこれらを実現できる最新の装備を持った電子顕微鏡施設の整備がようやく整いつつあり、そして、装置よりも大事な人材=頼もしい若手達も集い、この研究分野がエネルギッシュに進んで行く事が期待されました。わたくしも、微力ながら応援していきたいと思います。

写真集


司会される光岡先生

講演される吉川先生

質問される天児先生

質問される青山先生

2017年ノーベル化学賞受賞者のスライド

アカデミックサロンで話される澤口先生

今年の新製品の麒麟麦酒の紹介をされる小林様
アカデミックサロン風景

佐藤理事を紹介される安永先生

ご挨拶される渡辺記念会佐藤理事
会話が弾むアカデミックサロン

挨拶される顕微鏡学会前会長田中先生

挨拶されるIIRS副理事長臼倉先生

ライカマイクロシステムズ(株)田中様

ニコンインスティック(株)内藤様

日新EM(株)工藤様

日本電子(株)遠藤様

日立ハイテクノロジーズ(株)野村様

(株)真空デバイス 菅家様

サーモフィッシャー
サイエンティフィックのポスター

商業展示企業様の説明を聞く参加者
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