お知らせ
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認定NPO法人綜合画像研究支援(IIRS)
(共催:日本顕微鏡学会生体解析分科会)
第15回IIRSセミナー・第19回アカデミックサロン
のご報告

 時 2019年6月8日(土) 15:00〜18:00
 所 東京大学武田ホール(武田先端知ビル5階)

プログラム

第15回IIRSセミナー

「蛍光高分子による細胞内温度の可視化技術開発」
辻 俊一(キリン株式会社)
「研究者育成に着目した渡辺記念会調査研究〈三部作〉の報告と将来への提言」
澤口 朗(宮崎大学医学部)

第19回アカデミックサロン(意見交換会)

2018年度下期渡辺記念会調査研究
「生体試料の高分解能構造解析のためのクライオ電子顕微鏡法の現況と将来展望」
光岡 薫(大阪大学超高圧電子顕微鏡センター)

主催者よりの報告

研究者育成に着目した渡辺記念会調査研究 <三部作>の報告と将来への提言
第15回IIRSセミナーを終えて

澤口 朗(宮崎大学医学部 解剖学講座超微形態科学)

2019年6月8日( 土)に第15回IIRSセミナーが開催されました。今回はキリン株式会社の辻俊一先生に「蛍光高分子による細胞内温度の可視化技術開発」と題してご講演いただきました。ビールやワインを生産する<発酵>をはじめとする様々な状況下において細胞内温度を高い精度で検知する必要があり、蛍光高分子を応用して「温度を形態学的に可視化する」技術の開発研究に興味が惹かれました。この技術開発は将来、産業への応用が大いに期待されるところで、今後の展開が楽しみでなりません。続いて「研究者育成に着目した渡辺記念会調査研究<三部作>の報告と将来への提言」と題し、自身が講演する機会をいただきました。本講演は、新技術振興渡辺記念会から助成をいただいて実施された、 1)平成27年度下期「生命科学の将来を築く若手研究者育成・支援策の現況評価と課題抽出を目指した調査研究」 2)平成28年度下期「研究指導者育成の現況と異分野(特にスポーツ分野)における指導論に関する調査研究」 3)平成29年度下期「iPS細胞再生臓器品質評価に資する電子顕微鏡解析の現況と将来展望に関する調査研究」の 3 期にわたる研究者育成に関する調査研究成果を総括する内容でした。要約となりますが、 1)平成27年度下期の調査研究により、「研究者を育成する前段階にある『指導者の育成』は如何なる状況にあるか」という課題が抽出され、 2)平成28年度下期で「研究指導者の育成」に焦点を当てた調査研究を展開した結果、「研究分野においては指導者の育成が模索される一方、指導者の能力が試合や大会の結果などで顕在化しやすいスポーツ分野では、組織だった体系的な指導者育成が展開されている」ことが明らかになりました。
この 1)と 2)の調査研究結果を通じ、若手研究者育成に関わる現況を「育成される側」と「育成する側」の両面から調査し、総論的な見地から考察を加え、提言を発信した上で、各論的な一例として、再生医療の実現に期待が高まるiPS細胞研究に着目した、 3) 平成29年度下期の調査研究により、「iPS細胞の開発以来、再生医療研究の発展は目覚ましく、臓器再生と臨床応用に向けた研究開発は加速度的な進展を遂げてきたが、現況としては電子顕微鏡解析の応用は進んでいない」ことが明らかになりました。しかし同時に、令和 2 年(2020年)以降、iPS 細胞から網膜、肝臓、腎臓などの再生臓器で立体器官構築技術が確立する計画であり、この過程で電子顕微鏡解析のニーズが高まることが予想され、電顕解析を専門とする研究者や研究機関、関連学会が連携協力し、各種技術の普及と人材育成に一層、注力する必要が提言されました。研究者育成に着目した渡辺記念会調査研究<三部作>の成果をもとに、我が国が誇る高水準の電子顕微鏡解析技術に基づく研究者のネットワーク形成と技術の継承に注力して参りますので、今後とも皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

蛍光高分子による細胞内温度の可視化技術の開発

辻 俊一(キリン株式会社 基盤技術研究所)

細胞内温度は、古くより細胞の複雑な代謝機能と密接な関係にあると考えられる。その一例として、酒類製造の発酵工程では酵母の働きを制御するために精緻な温度制御をしており、生産物の質的変化に及ぼす細胞内温度の重要性が経験的に理解されている。この知見に着目し、酵母細胞内温度を測定できる感温性高分子を利用した分子レベルの蛍光性温度センサーの開発に取り組んだ。開発における課題は、酵母細胞内への温度センサーの導入法にあった、動物細胞内温度測定時に使用していたマイクロインジェクション法は、酵母細胞の硬い細胞壁に阻まれ使用困難になるため、全く別の導入方法を開発する必要性が生じた。検討の結果、カチオン性ユニットを組み込んだ新たな蛍光性温度センサーは、酵母細胞懸濁液と混ぜるだけで10分以内に酵母細胞質内へ移行することを見出した。そして、最も感度の高いセンサーであるNN-AP2.5は、25℃から35℃で蛍光強度が約2倍、蛍光寿命も6.2 nsから8.6 nsへと変化し、最高で0.09℃ものわずかな酵母細胞の温度差を検出できた[1]

上記で開発したカチオン性温度センサーは、濃度等の実験条件に影響を受けにくい測定パラメータとして主に蛍光寿命を選択していたが、蛍光寿命装置が高価であり汎用性に乏しい現状もあった。そこで、温度変化によって二波長における蛍光強度の比が変化する、いわゆるレシオ型センサーの開発を行った[2]。得られたセンサーは、酵母細胞のみならず哺乳類細胞にも利用できる汎用性の高いものであった。そこでレシオ型センサーを用いて,生体内のエネルギー消費の観点から注目を集めている褐色脂肪細胞の温度測定を行った[3]ので、その結果についても簡単にご紹介したい。

【文献】
1. Tsuji, T. et al., Anal. Chem., 2013, 85, 9815
2. Uchiyama, S. et al., Analyst, 2015, 140, 4498
3. Tsuji, T. et al., Sci. Rep., 2017, 7, 12889

参加者から頂いた感想

第19回アカデミックサロンに参加して

太田 啓介(久留米大学)

今回のアカデミックサロンは「生体試料の高分解能構造解析のためのクライオ電子顕微鏡法の現況と将来展望」をテーマとして開催されました。和らいだ雰囲気の中、議論を拝聴していたが、急な指名により私自身も愚見を申し上げる機会をいただきました。かなり時間が過ぎてしまい、すでに記憶は混沌の中、その時話したこととは違うことを記すかと思いますが、その点お許しください。議論そのものは、単粒子解析など現在の花形技術を日本が今から追いかけ、前に出ることが極めて難しい状況にあるという率直な御意見や、後追いにならないためにもクライオトモグラフィーの術を高めより高次な構造解析を求めるという考えが披露されていたと記憶しています。意見を拝聴し、個人的には2つのこと、すなわちこの技術が今後我々に何をもたらし、どこへ繋がっていくのかということと、もう1つはこの日本におけるこの分野の将来について考えていたように思います。

タンパク科学においては今後もこの技術は大きく寄与し、分野自体を大きく発展させると思うし、ある方向をもって取り組むべきと思いますが、専門家でも無い私がこれについて何を言えるわけではありません。一方、まだ未知の領域が多い高次な空間、特に構造が形へと繋がるメソスケール領域の解明に、この技術が今後大きく寄与するに違いないと思う反面、伝統的な形態学との折り合い点をみつけ、両者をシームレスに理解できる環境を作ることも大切なのではないかと感じていたと思います。もちろんクライオ技術が分子レベルで正しい情報を持つことは極めて重要ですが、より大きな構造を理解しようとする場合は技術的な問題は飛躍的に大きくなります。どこかで化学固定試料とうまくバトンタッチできる、その根拠をつみ重ねる事も大切だと感じています。

千葉県のホキ美術館を訪ねるとスーパーリアリズムの絵画コレクションを見ることができます。どれも遠目から観ると写真を超える現実感で迫ってくものばかりですが、私が感じるに、これらには2種類あるようで、近づいても、近づいても精密に書かれているタイプと、近づいてみると、まるで印象派のような遠目からは想像できないほどラフなタッチで描かれているものがあります。前者は製作に数年の時間を掛ける作品もざらと伺っており、その精神力に狂気すら感じる。一方後者は、人の目がどのように物を観ているのか感覚的に捉えているのかもしれません。人間の目にとって最も感度の高い周波数は一度当たり6Hz程度と聞いたことがあります。これらの絵画は、おそらくそういった部分を意識しているかは判りませんが、そう考えながら観ると、どの当たりの距離からデッサンし描かれていたのかを想像することもできとても楽しいものです。

横道にそれてしまいましたが、クライオ技術と伝統的な化学固定に基づく形態解析、印象派が好きな方の多い日本では、是非両者の折り合いをつけ、よりクールに生命活動の現場である、分子と形をつなぐメソ世界を捉えていけるようになればよいなと妄想するところです。こんな妄想すら議論させていただけるアカデミックサロンという貴重な場を提供いただいた大隅先生はじめIIRSの皆様に感謝申し上げます。

写真集

  • 講演される辻様

  • スライドを熱心に見る参加者

  • 質問される宮澤先生

  • 講演される澤口先生

  • 質問される田中先生

  • 会場風景

  • アカデミックサロン風景

  • 挨拶される光岡先生

  • 挨拶される田中先生

  • 質問される太田先生

  • 挨拶される川西事務局長

企業展示の紹介

  • ライカマイクロシステムズ(株)

  • (株)日立ハイテクノロジーズ

  • (株)ニコンインステック

  • (株)バイオネット研究所

  • 日新EM(株)

  • ライカマイクロシステムズ(株)伊藤様

  • (株)日立ハイテクノロジーズ 渡邉様

  • (株)ニコンインステック 蒲生様

  • (株)バイオネット研究所 新川様

  • 日新EM(株) 工藤様

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