お知らせ
<< お知らせ一覧へ戻る

日本植物学会第83回大会シンポジウムのご報告
「最先端可視化技術による植物解析
〜見る顕微鏡から捉える顕微鏡へ」

去る2019年9月16日(月・祝)日本植物学会第83回大会シンポジウムにおいて、日本植物形態学会と綜合画像研究支援の共催によるシンポジウムを開催しましたので、ご報告致します。

日 時 2019年9月16日(月・祝) 9:00〜11:40
場 所 東北大学川内北キャンパス
主 催 日本植物学会
共 催 本植物形態学会、認定NPO法人 綜合画像研究支援(NPO IIRS)
オーガナイザー 朝比奈 雅志(帝京大・理工・バイオ)
豊岡 公徳(理研・環境資源科学研究センター(CSRS))

プログラム

(敬称略)

1.走査電顕を用いた組織・細胞の新しい捉え方
豊岡 公徳(理研・CSRS)
2.オルガネラ立体構築 〜連続切片SEM法はTEMより簡単です〜
永田 典子(日本女子大・理)
3.連続切片法で広がる光学・電子顕微鏡観察の可能性:葉組織・細胞の三次元解析の例
大井 崇生1,山根 浩二2,谷口 光隆11名古屋大・生命農,2近畿大・農)
4.自家蛍光と付き合って蛍光イメージングする
児玉 豊(宇都宮大・バイオサイエンス教育研究センター)
5.イメージング質量分析による特異的代謝物の局在解析とその応用
中林 亮(理研・CSRS)
6.レーザーマイクロダイセクションを用いたトランスクリプトームとホルモノーム解析
朝比奈 雅志1.2,中野渡 幸1,山田 一貴1,湯本 絵美2,佐藤 忍3
1帝京大・理工・バイオ,2帝京大・先端機器分析センター,3筑波大・生命環境系)

主催者よりの報告

日本植物学会第83回大会シンポジウム「最先端可視化技術による植物解析〜見る顕微鏡から捉える顕微鏡へ」のご報告
豊岡 公徳(理化学研究所・CSRS、IIRS会員)

近年、顕微鏡技術の発展と装置の高度化により、組織・細胞の構造や変化を、3次元または4次元的に捉えることができるようになりました。さらに、遺伝子発現やタンパク質、植物ホルモンをはじめとした代謝物の様々な可視化・分析手法を用いることで、微細構造の観察と同時に細胞内での分子の動きを直接捉える試みが進められています。本シンポジウムでは、最先端可視化技術を用いた時空間的解析を進めている研究者が集い、これらの技術的基盤、ノウハウ、応用例などを紹介して頂きました。

前半では電子顕微鏡で組織・細胞・オルガネラを捉える内容、後半では光学系を中心に分子を捉える内容へ展開する構成でご講演を頂きました。分解能は前半のお話の電子顕微鏡の方が高いですが、後半の光学顕微鏡の方が捉える対象の方が小さく、組織→細胞→オルガネラ→タンパク質→分子の順に捕捉対象が変わっていく進行になりました。まず、私から走査電顕(SEM)を用いた新しい捉え方として、高倍率撮影法、イオン液体観察法、広域SEM撮影法、光-電子相関顕微鏡法を紹介しました。続いて、日本女子大の永田先生からは、連続切片SEM法を用いた3次元再構築法により、プラスチドやミトコンドリアの形態変化についてお話を伺い、暗所芽生えのミトコンドリアは複雑な形態をしていることを明らかにしていました。名古屋大の大井崇生先生からは、連続切片SEM法およびFIB/SEM法によるイネ葉緑体の電顕3次元再構築法についてお話頂き、塩ストレス下における形態変化についてご報告されました。宇都宮大の児玉豊先生からは、植物が持つ葉緑体の自家蛍光を取り除く方法を詳しく紹介して頂き、適した蛍光タンパク質の紹介、タイムゲート法の基本からその応用例についてお話して頂きました。理研CSRSの中林亮先生からは、イメージング質量分析による代謝物の局在解析の基礎から応用までのお話を頂き、フラボノイドやサポニンなどの可視化について、紹介していただきました。最後に、帝京大の朝比奈雅志先生から、レーザーマイクロダイセクションを用いたトランスクリプトームとホルモノーム解析について、その詳細な方法と解析結果についてお話を頂きました。

講演者の皆様にはとても綺麗な顕微鏡写真に富んだ研究発表を頂き、また、分野外の方でもわかりやすいお話を頂きました。本シンポジウムは2日目の午前9:00からという早い時間帯でしたが、150名を超える参加者にお出で頂き、参加者の皆様との間で大変有意義なディスカッションが行われ、盛況のうちに終えることができました。
本シンポジウムの講演内容に関しては、日本植物形態学会が発行するPlant Morphology誌のVol.32 (2020年5月刊行予定)において、演者の皆様にミニレビューを執筆して頂く予定ですので、ご期待ください。最後になりましたが、本シンポジウムの講演を快くお引き受けくださいました演者の皆様に深く感謝いたします。

日本植物学会第83回大会シンポジウム「最先端可視化技術による植物解析〜見る顕微鏡から捉える顕微鏡へ」のご報告
朝比奈雅志(帝京大学理工学部バイオサイエンス学科)

今回、日本植物学会第83回大会シンポジウム「最先端可視化技術による植物解析〜見る顕微鏡から捉える顕微鏡へ」のオーガナイザーを、理化学研究所の豊岡公徳先生と努めさせていただきました。まず、この様な貴重な機会を与えて頂きましたことに、お礼申し上げます。

タイトルの「捉える顕微鏡」ですが、これまでに見逃しがちであった微細構造であったり、2次元像では捉えきれなかった立体構造や時間的な変化、遺伝子やタンパク、代謝産物のように見えない物質の動き、新しい手法によって「いかに捉えるのか」、という意味で付けさせていただきました。顕微鏡技術の発展と装置の高度化、分析機器の検出感度の向上や新たな手法の開発によって、イメージングの手法は近年めざましい発展を遂げています。そこで今回は、組織・細胞の構造や変化を3次元または4次元的に捉える手法、遺伝子発現やタンパク質、植物ホルモンといった細胞内での分子の動きを微細構造の観察と同時に捉える試みを進めている研究者の皆さんにご講演をお願いしました。以下のご紹介は、豊岡先生の記事と重複する点があるかもしれませんが、ご容赦下さい。

前半は、電子顕微鏡で組織・細胞・オルガネラの立体構造や、時空間的な変化を捉える試みについて紹介していただきました。理研の豊岡公徳先生からは、光学顕微鏡と電子顕微鏡で同一個所を観察するCLEM(光-電子相関顕微鏡)法など、SEMを活用した新しい観察手法と、それによって得られた知見について紹介して頂きました。日本女子大の永田典子先生からは、従来はTEMによって得ていた細胞内立体構築像を、連続切片SEM法を用いて得る方法と、その応用例についてご紹介いただきました。続いて名古屋大の大井崇生先生からは、塩ストレス下における色素体の特徴的な形状変化について、FIB/SEM法を用いた解析の取り組みと、連続切片法との比較についてご紹介いただきました。

後半では、遺伝子やタンパク、代謝産物の時空間的解析・イメージングに関する研究例が紹介されました。

宇都宮大の児玉豊先生からは、葉緑体の自家蛍光について詳しくご説明頂いた後、自家蛍光を取り除くタイムゲート法など、植物の蛍光イメージングの最新手法に関する話題を発表していただきました。次に、組織切片上の代謝物の局在をイメージングする手法として近年注目されているイメージング質量分析計を用いた解析法とその応用例について、理研CSRSの中林亮先生にご紹介いただきました。最後に私から、レーザーマイクロダイセクション法を用いて回収した微量組織からのトランスクリプトームとホルモノーム解析の取り組みについてお話しさせていただきました。

本シンポジウムは、学会2日目の朝9時開始という時間帯にもかかわらず、多くの皆様に参加いただき、盛況のうちに終えることができました。ご参加いただきました皆様にお礼申し上げます。

最後になりましたが、講演者の皆様にはお忙しい中、様々な最先端可視化技術の基礎から具体的な実用例についてご講演いただき、心より感謝申し上げます。

▲ページtopへ
<< お知らせ一覧へ戻る