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第42回日本分子生物学会年会フォーラムのご報告
最小生物、マイコプラズマの運動能
−メカニズムと起源-

2019年12月3日(火)、第42回日本分子生物学会年会において、綜合画像研究支援が企画しましたフォーラムを以下のように開催しましたので報告します。

演  者 宮田 真人 (大阪市立大学 教授)
日  時 2019年12月3日(火曜日)18:30〜20:00
会  場 福岡国際会議場、第13会場(2F 202)
オーガナイザー 川本 進(認定NPO法人綜合画像研究支援 理事/千葉大学真菌医学研究センター名誉教授)
登田 隆(広島大学大学院統合生命科学研究科・ 広島健康長寿研究拠点(HiHA) 特任教授)

プログラム

18:30〜18:35 趣旨説明
川本 進(認定NPO法人綜合画像研究支援 理事・千葉大学 名誉教授)
18:35〜19:45 最小生物,マイコプラズマの運動能 -メカニズムと起源-
宮田真人(大阪市立大学大学院理学研究科 教授)
19:45〜20:00 総合討論とまとめ
登田 隆(広島大学大学院統合生命科学研究科・広島健康長寿研究拠点 (HiHA) 特任教授)

主催者よりの報告

川本 進(認定NPO法人綜合画像研究支援 理事・千葉大学 名誉教授)

生命科学を先導する分子生物学において、高分解能可視化技術がこれまでに果たしてきた役割は大きく、当法人は、その具体例を分子生物学会フォーラムの場で毎年紹介して来た。今回講演をお願いした宮田真人教授(大阪市立大学)は、分子細胞生物学手法や最先端の電子顕微鏡技術などを用いて、細胞壁をもたない、最小の細菌であるマイコプラズマが、宿主組織内部を高速に‘滑走運動’や‘遊泳運動’するユニークなメカニズムについて、その装置の構造と変化、構成タンパク質、結合対象、エネルギー源、力学特性などを独自の研究で明らかにし、大きな成果を上げて来られた。

近年は滑走運動について、力発生装置の巨大構造を、クライオ電子顕微鏡により4.8オングストロームの分解能で明らかにするなどして、以下のメカニズムを提案している。「ATP合成酵素とグリセリンリン酸キナーゼから進化したモーターから発生した力が、細胞外部表面に伝わる。その力は巨大な“あし”タンパク質450分子を動かし、宿主表面のシアル酸オリゴ糖を、引っ張り、菌体を前に進める。」本フォーラムでは、最小生物、マイコプラズマの運動のメカニズムと起源などについて、分野外の研究者にもわかりやすい形で、紹介する。

参加者からいただいた感想

前川 裕美(九州大学大学院農学研究員 講師)

フォーラムでは大阪市立大の宮田真人先生の一時間を超える熱い講演に興奮しました。スピロプラズマの螺旋と内部のリボン構造のピッチが同じという、オッと驚く話から始まり、次々に全く違う運動のメカニズムを紹介されました。宮田先生の学会講演を聴いたのは初めてでしたが、電子顕微鏡によって明らかにされた分子の構造と、遺伝子の解析などが合わさり運動のメカニズムがイメージできました。モービレのモーター蛋白質が進化しているらしいことを見つけたことから、さらに面白い研究が展開されそうです。なぜマイコプラズマの運動はこんなに多様なのか?という疑問にも、そう遠くない未来に見てきたように熱く語ってくれるのではないかと期待しています。

沼田 治(筑波大学 学長特別補佐 特命教授)

第42回日本分子生物学会(福岡)の第一日目、私はフォーラム「最小生物、マイコプラズマの運動能・メカニズムと起源」に参加した。大阪市立大学の宮田真人さんの長年の研究成果を聞くのを楽しみにして参加したのである。宮田さんとは20年以上「生体運動研究合同班会議」でご一緒しており、毎年、宮田さんのマイコプラズマの運動メカニズムの研究発表に注目していた。今回は、宮田さんの研究の過去、現在、未来を聞くことができ、そのスケールの大きいことに「オー」と感嘆してしまった。何に驚いたかというと、1つ目は人工的に作成した細胞に、らせん運動するスピロプラズマのらせんを構成する骨格タンパク質遺伝子を導入すると、丸い人工細胞がらせん状になり、さらにスピロプラズマのアクチン様タンパク質MreBの遺伝子など計7種類の遺伝子をらせん状の人工細胞に導入すると、なんとそれがあたかもスピロプラズマのように動き出したことである。我ながら驚いて歓声を上げてしまった。

2つ目は、マイコプラズマ・モービレの運動器官の構造解析の結果、細胞外には細胞を動かすボートのオールのような構造がきれいに並び、細胞内部にはオールの列に沿って、何とATP合成酵素が数珠つなぎに並んでいるというのである。マイコプラズマ・モービレの滑走運動の裏には、私にとって想像を絶するしくみがあったのだ。ということで、また歓声を上げてしまった。

宮田さんの研究では、運動器官を構成しているタンパク質の3次構造を高い分解能で解析し、見事な3次構造モデルを示している。そして、スピロプラズマの奇妙な運動やマイコプラズマ・モービレの滑走運動をきれいなムービーで示している。まさに、タンパク質の分子構造と細胞の運動メカニズムの関係を見事に可視化しているのである。それで、私は感動したのである。この感動は、どこかで味わったことがある。学生時代に参加した「生体運動研究合同班会議」で平本幸雄先生(当時、東京工業大学)がウニ卵の染色体の運動をムービーで示してくれた時、染色体の滑らかな動きに感動した。もう一つは、同じ班会議で、宝谷紘一さん(当時、京都大学、宝谷さんは”先生”と呼ぶことをお許しにならなかったので、あえて”さん”にしました。本年ご逝去されました。謹んでご冥福をお祈りします)が見せてくれた微小管の動的不安定性のムービー、微小管が伸びたり縮んだり、目まぐるしく変化する様を見た時、本当に驚いてしまった。

このフォーラムで、久しく忘れていた感動を味わうことができた。宮田真人さん、ありがとうございます。

前島 一博(国立遺伝学研究所 教授)

12月3日の夜、生物物理学分野のスター教授である大阪市大の宮田真人先生の独演会を聴くため、フォーラムに参加した。お話はいつものマイコプラズマ・モービレの滑走モーターではなく、らせん状に動くスピロプラズマから始まった。形態から、骨格、分子構造、それが生み出すメカニクスまでをカバーし、とても興味深かった。その後は、人工合成ゲノムを持つ人工?マイコプラズマに関連遺伝子を導入し、そのマイコプラズマを走らせる話題。これは度肝をぬくスケールである。最後にモービレの話題に移って行った。宮田さんのお話しの詳細はとてもここで説明できるものではない。あえて書くならば、遺伝子解析・操作、生化学、電子顕微鏡解析、構造解析、一分子計測、モデリングなど、使えるものは何でも使って、運動のメカニズムとその進化の過程を分子以下のレベルで解き明かす、というとても壮大なものである。「ひとつの学問分野」が創り出されていく様子に正直とても興奮した。夕方からのセッションで皆さんお疲れの時間であったかもしれないが、最高のサイエンスを聴けたフォーラムであった。

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