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認定NPO法人綜合画像研究支援(IIRS)
第14回可視化技術ワークショップのご報告(協賛:(公社)日本顕微鏡学会・生体解析分科会)

開催日時 2021年11月6日(土) 11:00〜12:10
開催方法 Zoomによるオンライン開催

第14回可視化技術ワークショップ

(敬称略)

【座長】登田 隆 (広島大学)

「神経科学研究における光・電子相関顕微鏡法の可能性」

釜澤 尚美(マックスプランクフロリダ神経科学研究所)

近年、脳の機能を細胞レベルで可視化する光学顕微鏡技術が飛躍的に進歩した。しかし細胞間情報伝達のシナプス機構は電子顕微鏡を用いた微細構造の解析が必要となる。本講演では光・電子相関顕微鏡法を脳神経科学に導入した研究例を用いて、電子顕微鏡法の役割と展望について議論したい。

主催者よりの報告

第14回可視化技術ワークショップのご報告

登田 隆(広島大学大学院・IIRS理事)

認定NPO法人 綜合画像研究支援(IIRS)主催の第14回 可視化技術ワークショップにて、当日、司会を勤めさせていただきました登田です。

今回のワークショップは、「神経科学研究における光・電子相関顕微鏡法の可能性」というタイトルで、マックスプランクフロリダ神経科学研究所(Max Planck Florida Institute for Neuroscience、MPFI)のイメージングセンター/電子顕微鏡コアファシリティ部門にて、チームリーダーとして大活躍しておられる釜澤尚美先生にご講演をお願いしました。

当日はオンラインでの開催にもかかわらず、多くの聴衆の方々にご参加いただき、遠隔ながら熱のこもった盛り上がった会になったことをまずご報告いたします。釜澤先生におかれましては、ご多忙のところ講演を快諾していただき、また時差のため米国フロリダ時間で夜10時から深夜にまで及ぶご発表となり、お疲れ様でした。しかし先生には、講演後明るく「全然平気」とおっしゃっていただきました。釜澤先生、ワークショップ参加者の皆様に改めまして厚く御礼申し上げます。

ご講演では、釜澤先生はまずご自身の研究者としてのご略歴から紹介されました。先生は本IIRS理事長であられます大隅正子先生の元で学部生活を終えられ、その後さらに博士号を取得されました。この博士号を目指した研究の過程で、電子顕微鏡に出会ったということでした。その後、コロラド州立大学さらに自然科学研究機構・生理学研究所の職員を経て、2011年に渡米され、それ以来現職についておられます。フロリダの研究所内でも釜澤先生の業績は高く評価されており、研究所のHP-Webサイトにて、今年「Celebrating Women Making History at MPFI: Naomi Kamasawa “The Pioneer”」として特集記事が掲載されました(写真参照)。

研究紹介のスライドでは、超微細分子解析技術の世界最先端を走る光電子相関顕微鏡(EM Cryo CLEM/Correlative Light Electron Microscopy)法、CLEM2光子SEMにおけるトモグラフィー画像解析法、さらにCryo固定と共焦点CLEM法などを丁寧に説明していただきました。Beautifulとしか言いようのない脳細胞・ニューロンの連続タイムラプスイメージング像も示され、“seeing is believing”を正に体現されたご講演でした。また脳のシナプス可塑性を説明する有名なヘッブの法則(Hebbian plasticity theory)にて提唱されたシナプスの伝達効率に関して、予想に反してシナプス小胞の大きさと伝達効率は必ずしも正比例しないという驚くべき最新の成果も、先生が撮影されたシナプス画像を示しながら、紹介されました。

ご講演終了後も、熱心な質問が多数出て、ワークショップはさらに盛り上がりました。本講演は分野外の研究者また科学に直接関わらない一般聴衆にとってもわかりやすい内容であり、社会に対する情報発信という観点からも、IIRSにとって重要なものであったと思います。21世紀の科学を担っていく次世代―小、中、高校生たち―に対しても、顕微鏡を介したミクロな世界へ歩みたくなる機会を与えて頂いたと思います。

皆様のご協力のお陰をもちまして、滞りなく、会が終了しましたことに感謝申し上げます。またワークショップの進行にご尽力いただいたIIRSのスタッフの方々にも深く感謝いたします。皆様、今後ともIIRSの活動にご高配頂けますことをお願い申し上げます。

参加者から頂いた感想

第14回可視化ワークショップに参加して感銘を受けたこと

佐藤征夫(一般財団法人新技術振興渡辺記念会 専務理事)

今回、認定NPO法人綜合画像研究支援(IIRS)主催のワークショップをZoomで視聴させていただきました。一言で「素晴らしかった」との印象です。
東京から時差14時間のフロリダからの釜澤尚美先生の最先端研究のご講演を拝聴して、幾つも深く心に残ることがありました。

まず、高度な研究内容を多くの鮮明な写真、動画を使って分かり易く説明された見事なプレゼンテーション力に魅せられました。大学で物理学をかじっただけの非研究者の小生でもこの分野の研究の目覚ましい進展ぶりが理解できました。光・電子相関顕微鏡法の脳神経研究への工夫を凝らした適用が脳の「構造と機能」の解明に大いに貢献することとともに今後益々期待されることが分かりました。

また、釜澤先生率いるチームの所属先は、世界に冠たるドイツのマックスプランク研究所がヨーロッパ以外に唯一設けている研究所であると知り、深く感じ入りました。研究者集団の質の高さ、施設及び周辺機関を含めた研究環境の良さ、提供及び受け入れ機関の組織的な対応力等がもたらした結果だと思われます。我が国の研究施設運営や研究環境整備を考える上で参考になる点が多くあるのではと思います。

さらに、民間に就職後、大学に戻られ研究に専念され、今や世界的に活躍されておられる釜澤先生の「基本を大切に」との強い意志、気力、不屈の継続力、ご努力に感嘆しました。陰に陽に励まし、支えてこられたIIRS理事長の大隅正子先生を初めとする諸先生方との師弟愛ともいうべき素晴らしい結び付きの強さに感銘を受けました。

コロナ禍の中でともすれば停滞しがちな研究協力、情報交流、意見交換を今回のワークショップはオンラインで実現され、しかも、世界同時配信やパソコン画面上での明瞭な画像共有など、オンライならではの良さを引き出された点も良かったと思います。
IIRSは今年度で事業活動を発展的に終息されるとのことですが、今まで諸活動を活発にされ当該研究分野の発展にご尽力をされましたIIRSの理事長、理事、関係者の皆様に敬意を表します。

第14回可視化ワークショップに参加して

中澤英子(株式会社 日立ハイテク)

先日のIIRS可視化技術WSに参加させていただき、誠にありがとうございました。
最新の脳神経学分野における電顕解析事例等をご紹介いただき、大変勉強になりました。重ねて御礼申し上げます。
またご講演では、釜澤先生の人となりをはじめ、ご研究への真摯な姿勢、また人材育成への並々成らぬご尽力に感銘いたしました。
その根底に流れるものは、科学が好き、学ぶことが好き、人が好き、という博愛の精神にあるように思われます。
特に、釜澤先生の枚挙に暇のない数多くの実績の上の築かれたネットワークの広さは、将来の学際領域を背負って立つ研究者にとって大いに学ぶべきところであると痛感した次第です。最先端分野でご研究されておられる釜澤先生との交流は大変貴重な機会でございまして、また電顕研究者との交流の機会を頂戴できれば有難いと存じます。
釜澤先生の益々のご研究のご発展とご健勝をお祈り申し上げ、簡単ではございますが、先日のWS参加の感想とさせていただきます。

第14回 可視化ワークショップ 釜澤尚美先生による「神経科学研究における光・電子相関顕微鏡法の可能性」ご講演会に参加して

伊藤 喜子(ライカ マイクロシステムズ株式会社)

COVID-19の影響下、海外と行き来が困難となって久しく、国内では、漸く直接対面が少しづつ再開しつつある中、on-line技術の便利さともどかしさ、反して、直接対面での情報量の多さ・ありがたさ・難しさ、この両面を痛感する中、米国フロリダで活躍中の釜澤先生と、国内各所の参加者を繋いで開催されました。

何においても、フロリダの釜澤先生の声を on-lineでも、ダイレクトに伺うことができるのは、もどかしさはあるもの、やはり素晴らしさが勝る環境になったと思います。

ご研究の根幹の「神経」の最新研究「コネクトミクス」の一端を、ご研究のルーツでもある濱先生の言葉を冒頭に紹介されながら、お話しが進みました。

神経という臓器は、細く細く繊細で、化学反応の塊のようでありながら、動物の全長に渡る長さと、各臓器への有機的な広がりを持つネットワークであり、脳と共に、全容を理解するには、やっかいな相手。多くの科学者により、その時代その時代の最新技術を取り込みながら、脈々と解析が続けられていると理解しています。その最先端技術は、多様に構築されてきたイメージング技術、光学顕微鏡法と電子顕微鏡法の相関法であり、これら駆使して走り続けている MaxPlanc フロリダ の成果の一端を鮮やにご紹介いただき、最先端研究所のパワフルさを垣間見ることができました。

また、COVID-19の大変な影響下での、研究・教育の対策も、大いに参考になり刺激を受けました。日本と米国、言語・文化が異なる地で、溶け込み、多くの研究者と協調、工夫しながらの活動、多くの方に、頼りにされている!と肌で感じることができ、"Women Making History at MPFI"の受賞は、選ばれるべき方だったのよね、と実感できました。

おわりに、釜澤先生は、大学時代の1年上の先輩であり、4年生になるおり(太古の昔ですが)引継ぎ等々でお話しを伺う事もあり、今でもよい思い出であり、電子顕微鏡をはじめとするイメージング技術・研究では、物凄く身近に感じる存在。活躍されている姿は、大変、励みになっています。日本と米国、科学者と装置メーカー、少しばかり立ち位置が異なりますが、関係する方と温かく連携とりながら、多くの技術にチャレンジしながら、構造と機能とは?を、今後も、ひたすら一生懸命考えながら、私も頑張ろうと思った次第です。

第14回可視化技術ワークショップに参加して

村井稔幸(大阪大学・医学部)

「神経科学研究における光・電子相関顕微鏡法の可能性」と題したMax Planck Florida Institute for Neuroscience (MPFI) の釡澤尚美先生のご講演を拝聴いたしました。 この度、一言述べるようにとのご指名に与り、恐縮至極に存じます。

神経科学分野では、特にシナプスにおける構造と機能の関係を解明する上で、電顕による超微細構造の可視化が重要な役割を果たします。釜澤先生は、この構造と機能を相関させるために新規なCLEM技術を確立されました。まず、フェレット大脳皮質視覚野の神経細胞樹状突起スパインの観察についてのDavid Fitzpatrick博士との共同研究について、大変わかりやすくご解説いただきました。このご研究では、SBF-SEMとin vivo 2光子励起カルシウムイメージングのCLSMを介したCLEM技術を開発されました。その技術開発の過程で、既存の3D-volume EM試料調製プロトコールに様々な改良を加え、生物試料のSBF-SEMに適したOnPoint高感度反射電子検出器を導入してS/N比を向上させて膜などの超微細構造を明瞭に可視化し、さらに、focal charge compensation deviceを導入して窒素ガスをブロック表面に吹き付けることによりアーティファクトを低減したSEM像の取得に成功されたという解説は圧巻でした。このように、興味の対象に適した可視化を実現するための並々ならぬ努力と創意工夫の積み重ねがあったことを詳しくご説明いただいたことが大変勉強になりました。その成果としてHebbian可塑性に挑むNature誌の論文に繋がったとのお話は、まさに電顕による可視化技術の重要性を示されたものでした。

引き続き、同じくMPFIのRyohei Yasuda博士との共同研究成果をご紹介くださいました。このご研究では、マウス器官型海馬切片培養試料に対して2光子励起法を用いたケージドグルタミン酸アンケージングによる単一スパインにおけるsLTPとAT-ssSEM法のCLEMを実現されました。その中で、cryo-CLSMやATUMtomeによる連続切片作成の詳細をお聞かせいただき、イメージングセンターの現場の様子を伺える貴重な機会でした。私自身、CLEMを用いた研究を産総研・日本電子株式会社様とさせていただく機会があり、その皆様に大変感謝しています。今回のご講演から、神経ネットワークのみならず、これまで困難であった様々な生体内超微細構造と動的な機能発現機構に対して、SEMを用いた3D-CLEMが有用な解析手段として今後ますます重要になると改めて強く感じました。

釡澤先生は、私にとりましていつも輝く存在でいらっしゃいます。今回も、SEMそのものの利用にとどまらず、先進的なvirtual realityシステムsyGlassをデータ相関に利用されたり、深層学習アプローチをされるなど、まさにMPFIの誇る電顕のpioneerとして、フロリダの太陽のように明るく、行く道を照らしていただいた感がします。また、最後に、座右の銘とされている濱清先生のお言葉を紹介していただきましたが、濱先生は奇しくも筆者の所属部局で解剖学第一講座を主宰されていたこともあり、網羅的な遺伝子解析技術が隆盛を誇る昨今においても、「見る(視る)」ことの重要性について再認識いたしました。IIRSワークショップを通じて、可視化科学・技術の継承と発展により生命科学と科学技術の発展に貢献するということの重要性を改めて実感しました。このIIRSの理念が永く広く継承され、これからも日本の生命科学と科学技術の発展に貢献することを願ってやみません。今回ご講演いただきました釜澤先生、座長の登田隆先生、そして、理事長の大隅正子先生とIIRSの皆様に心より感謝申し上げます。

IIRS第14回 可視化技術ワークショップを拝聴して

豊岡公徳(国立研究開発法人 理化学研究所環境資源科学研究センター)

第14回 可視化技術ワークショップでは、マックスプランクフロリダ神経科学研究所の釜澤 尚美 先生のご講演「神経科学研究における光・電子相関顕微鏡法の可能性」を拝聴しました。これまで私は、光・電子相関顕微鏡法(CLEM)の開発に携わる機会があり、現在も主に植物試料を用いてCLEM解析や3次元(3D)解析を進めているので、釜澤先生のご講演を心待ちにしていました。GFPなどの蛍光タンパク質、共焦点レーザー顕微鏡など蛍光イメージング技術の発展により、光学顕微鏡(光顕)で広く、深く、しかも生きた状態で撮像することが可能になりました。釜澤先生が行っている脳の可視化は、神経細胞のシナプスが絡み合い、複雑な構造をしていることから、これまでシリアルブロックフェイス(SBF)-SEM法やテープ回収法によるアレイトモグラフィー法により、3D構造が明らかにされてきました。さらに、それらネットワークの機能を理解するには、機能と形態を結びつけるCLEMが必須であり、釜澤先生はいくつかの解析例をお話くださいました。一つは、生きているマウスの脳へ視覚刺激を与えて、2光子顕微鏡を用いた視覚野の蛍光ライブイメージング後、固定した試料をスライスして広領域を細胞レベルで蛍光撮影して、さらにSBF-SEMで連続撮像して3D-CLEM像を取得されていました。この撮影に際し、大きい試料の固定・撮像に関する問題点を、さまざまな条件を検討し、工夫を凝らすことで撮影できたことをご報告されていました。CLEMで光顕と電顕の位置合わせが難しい点ですが、光顕下で血管を参照に目的箇所をトリミングし、血管の形態を使って位置合わせを行なっていました。これにより、太いシナプスに突起スパインが多いわけではないことを証明されていました。釜澤先生は工夫だけでなく、最新技術に挑戦しており、窒素ガスを吹きかけることでチャージアップを防ぐSBF-SEM法による連続撮像、高圧凍結した脳スライス切片を凍ったまま共焦点レーザー顕微鏡するCLEM解析など、高圧凍結技法を行なっている私も以前から試して見たいと思っていたクライオ-共焦点イメージングの試験も進めておられ、今後のさらなる研究・開発の展開が楽しみです。釜澤先生が最後に、”新しい技術を取り入れ続けることが大切”とアドバイスをくださいました。私も常に情報収集に努め、新しい技術にチャレンジしていきたいと思いました。

釜澤 尚美 先生、そして、大隅正子先生をはじめIIRSの関係者の皆様、お忙しいところ本当にありがとうございました。

第14回可視化技術ワークショップに参加して

釜崎とも子(北海道大学先端生命科学研究院)

私が日本女子大学大学院修士課程の学生だった頃、釜澤先生は学位を取得され、アメリカへ留学されました。その後、顕微鏡学会などで数年に一度お目にかかる毎に、パワフルにご活躍される様子を垣間見ることができるのを、後輩として楽しみにしておりました。今回、IIRS第14回可視化技術ワークショップにおいて、釜澤先生の最近のお仕事の成果を拝聴する機会を思いがけずいただだくことができ、大変嬉しく思いました。また、コロナ禍のため中々お目にかかれない、懐かしいお名前や、大隅先生のお姿をオンラインでお見かけすることができ、心安らぐひとときとなりました。

講演会では、美しい形態と機能の追究のため、神経生物学分野において国際的に貢献し続けておられる釜澤先生の足跡や、今後への挑戦を見ることができました。「行ける所まで行って見る」ことをしなければ成し得なかった出来事や、成果であることに間違いはなく、感銘を受けました。私自身も電子顕微鏡を用いて細胞生物学的研究を続けている身として、初心に立ち返る思いや、今後も地道に頑張って行こうという励ましをいただいた気持ちになりました。

今後もIIRS様には、国内外で活躍する電子顕微鏡研究者から、キャリアパスや、後進の研究者に向けたメッセージを伝えていただける場を設けてくださいますと有り難く思います。

写真集

座長を務める登田理事

ご講演される釜澤先生

まとめの挨拶をされる安永理事

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